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第130話 テツとジヌ

 あゆむに聞かれてサブは困っている。 「セックスしたんだよ、最後まで。 あゆむは18才になるまでダメだろ。」 「うん、でもいつも裸で抱っこしてるからセックスってそんなにすごい事に思えない。」  あゆむの頭を撫でて 「そういうのは内緒だよ。」  みんな知ってる事だが、一応大人になるまで我慢、という事になっている。  テツは結婚指輪を買いたい。 「お揃いのバングルがあるから、いらないよ。」 「みんなに知らせるためにも必要だろ。」 「みんなって?」  ジヌは、スタジオに来る人たちは知ってるからいい、と思った。 「ジヌは、いつまでホストを続けるの?」 「え?お金を貯めなくちゃ。」 「そうか、いくら貯めればいいんだ?」 テツは考えてしまった。  ミクオがテツの部屋に入って来て分厚い封筒を手渡した。 「これは、CDの売り上げ、と作曲料。 みんなに配当はあるんだけど、結婚祝いを兼ねてテツには、今渡すよ。  何かと、物入りだろ。」 「え?あ、ありがとうございます。」  いつも至れり尽せりのミクオだった。 以前借金した事もある。  ホストの稼ぎでとっくに返したが、あの時は恥ずかしかった。  キャバ嬢に入れ込んで借金をして、ホストになった。恥以外の何でもない。 (ジヌには話せないなぁ。)  テツは結婚したのにさっそく隠し事が出来たのが嫌な気分だった。秘密なんかないピカピカの新婚生活を始めたかった。 「ジヌ、ごめんよ。愛してる。」 唐突に抱きしめられて、ジヌは混乱した。 「テツは、犬嫌い?」 「ジヌこそ唐突だ。犬は好きだけど飼ったことはない。世話が出来るとは思えない。」 「僕ね、結婚したら犬を飼うのが夢だったんだ。 二人で犬の散歩に行くの。」 「どんな犬を飼いたいの?」 「ペットショップに行かないとわからない。 あのぅ、ワイマラナーって知ってる?」  二人は六本木ミッドタウンの手前のペットショップに行ってみた。 「ウチは小型犬しか扱ってないよ。」  ワイマラナーは希少犬種だと言われた。ブリーダーから直接予約を取り付ける必要があると言う。 「キースに聞いてみるよ。ドイツの犬らしいから。」

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