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第133話 テツの想い
帰って来てテツは機嫌が悪い。
「なあ、ジヌ、やっぱり、仕事辞めてくれないか?」
「うん、今日は僕も気持ち悪かった。
普通、あんなに接近してくるお客さんはいないよ。
普段、どんな所で飲んでるんだろう?
お触りOKとか、日本の恥だね。」
「俺、ぶん殴りに行こうかと思ったよ。
アミさんが代わりにひっぱたいてくれた。」
「あーあ、違う仕事探すの大変だ。」
「ジヌはなんでディアボラに来たの?
円城寺社長とは知り合いだったの?」
「ううん、カフェでナンパされた。」
ジヌは、日本に来て大学に編入した。住所が必要で、親の決めたアパートに住むことになっていた。仕送りも多くないから、バイト探すのに求人誌、持ってスタバに入ったら、円城寺に声をかけられたらしい。
「仕事、探してるのか?
儲かる仕事、あるよ。」
って誘われた。
「名刺、貰ったら社長って書いてあって、信用した。」
「危ねぇなあ。よく無事だったな。」
男を売る風俗だってある。売り飛ばされなくて良かった。ジヌは可愛いから高い値がつきそうだ。考えただけではらわたが煮えくりかえる。
当分、仕事は続ける事にして、テツは音楽のほうに力を入れたい、と思った。
「ジヌ、ピアノを弾いて。
俺もベースをやる。それから作曲も。
一番好きなことを頑張ろう。」
二人で三階のスタジオへ行った。
「何か歌って。」
ジヌの優しい声が聞きたい。綺麗な曲を歌い出した。韓国には美しい歌がある。
ピアノを弾きながら歌うジヌの声。嫌な思いも流してしまうような。
(ジヌのために綺麗な曲を作ろう。
俺のジヌを汚す奴な許さない。)
また、怒りが湧いてきた。
どんな苦しみを耐えてきたのだろう。愛する人を亡くして。
自分だったら耐えられない。愛しさが込み上げてくる。
ジヌと先生のプラトニックな想いは、純粋さが際立つ。
「何だか羨ましいな。先生とジヌは美しい。
俺はジヌを汚してしまったんだろうか。」
「イヤだ。そんな風に思わないで。
僕たちの愛が汚らわしい物みたいだ。」
テツはいつもジヌを抱きたいのだ。
(先生はどうして我慢出来たんだろう、こんなに愛しいのに。)
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