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第134話 白いシャツ

 ジヌは、テツが仕事に行く時の白いシャツが魅力的に感じる。そんな所が好きだ。  着替えているテツは無自覚だ。ゴツゴツした長い指がシャツの袖を通る。ボタンを触る。  ピシッとアイロンのかかった清潔なシャツ。 毎日見慣れた光景なのにいつもドキドキしてしまう。 「うん、どうした?」 「テツがかっこいいから離れたくない。」 シャツの裾を掴んでジヌが言う。  ネクタイを選んで首に巻いて結ぶ仕草も、スーツの上着に袖を通す仕草も、全部素敵だ。 「大人の男の人だ。」 テツに抱き寄せられて、その胸に顔を埋める。 「ジヌもそろそろ支度するんだろ。」 「うん、なんだか今日は、テツに甘えたいんだ。」  さっき抱いた時、身体が熱い気がした。 「ジヌ、熱があるんじゃないか?」 「うん、テツから離れたくない。」  体温計を探して熱を測ってみる。 「38度5分、たいへんだ。熱あるぞ。」  テツは昨夜、風呂に入れてからずっと裸にしてしまった事を思った。 「裸で眠ったから風邪ひかせたか?」 (俺のせいだ。腕に抱いていたから寒くないと思ったが。) 「ごめんよ。可愛くてすぐ脱がせちゃうから。 俺のせいだ。」 「大丈夫。テツ抱っこして。」  スーツのテツに抱いてもらうのが嬉しそうだ。 「うーん、いい匂い。何か付けてる?」 「ああ、凍夜にもらったムスクを少し、な。」 「ダメだよ。女の人が寄って来るよ。」 『ディアボラ』では少し香水を付ける。  凍夜が、 「女の好きな香りだ。」 と言ってテツにくれたものだ。 「ムスクは催淫性だ。少しにしろ。」 と言っていた。 「ジヌは、今夜は休め。」 「一人にしないで。僕、心細いよ。」  テツも今夜は休む事にした。 電話を入れる。零士に伝えてもらった。彼はもうホストのリーダーだ。 「今日はゆっくりしよう。 何か食べたい物あるか?」 「うーん、僕はテツが食べたい。」 「ははっ、可愛いなぁ。」  熱っぽい潤んだ瞳で抱きついてくる。たまらなく可愛い。  スーツを脱いでいると 「ネクタイを取ってシャツのまま、来て。」  細い指でシャツのボタンを外す。はだけた胸に顔を擦り付けて 「テツの匂い、いい匂い。」 「ダメだよ、その気になっちゃうだろ。 それより、医者か?薬か?必要だろう。 買いに行ってくるよ。」 「行かないで。」  いつになく甘えてくる。

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