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第135話 軽い風邪
スタジオに来ていたキースに熱がある事を言うと、かかりつけの六本木クリニックに連れて行く事になった。車を出してくれる。
時間外でも診てもらえた。さすが東京有数の繁華街だ。幸い、風邪だという診断だった。
「薄着はダメだよ。」
帰ってきてキースに釘を刺された。
「ごめんよ。この所、ジヌの体温が高いなぁ、とは思ってたんだよ。
病気だったなんて、俺、迂闊だな。」
「病気って大げさだよ。
薬、飲んで寝てれば治るよ。」
テツは、結婚とはいろんな事に直面するものだと改めて知った。
静かにベッドで寝息を立てているジヌに、愛しさが溢れてくる。
日々の暮らしを二人で分かち合う。責任を感じるが、それはとても嬉しい事だった。
二人で三日ほど『ディアボラ』を休んでしまった。ジヌを一人にさせておけなかった。
ジヌが普通に起きられるようになって、スタジオに上がって行った。
「ピアノが弾きたい。」
テツもベースが触りたかった。
『凍てついた夜』のオリジナル曲を弾いた。
思わず夢中になって、曲に没入した。
久々に楽器を触るのは楽しかった。
サブが入って来た。
「ノリノリだね。病み上がりとは思えない。」
「僕、音楽が足りなくなってたんだ。楽しい!」
「俺、新曲の構想があるんだよ。」
仕事が終わったのか、キースとミクオとタカヨシも上がってきた。
ミコトを送って凍夜が入って来た。
「ジヌ、復帰したか?良かった。
ミコトも心配してたんだよ。」
松ちゃんもサックスを持って立ち寄った。
「わあ、何だかみんな揃ったね。
セッションやろう!」
それぞれの楽器を演奏する体制になった。
「ジヌ、大きい音、大丈夫か?」
「うん、大丈夫、楽しい。」
「じゃあ、久しぶりにオリジナルを演ろう。」
みんな一緒にやる事に飢えていたようで、
結構長い時間、演奏した。定番のスコア通りでは飽き足らず、それぞれがソロを取りアドリブで続けた。
「ふうーっ、ちょっと休憩。」
「いいねぇ、こんな感じ。」
ミクオが爆弾発言!
「今度の『東京湾メガフェス』のオファーが来てるんだ。新人バンドがみんな出たがってる。
私たちもやるかい?」
「えっ?本当?やりたい!」
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