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第138話 メガフェス 2

 降って湧いたような、メガフェスのオファー。 「あまり、マスコミに露出しなかったのに、なんで俺たち?」 この疑問がついて回る。みんなそれぞれ活躍している。松ちゃんのユーチューブチャンネルは結構なフォロワーがいる。サブの観音寺夢子チャンネルは、熱狂的なオタクファンがたくさんいる。  『凍てついた夜』はシングルCDを一枚リリースしただけだった。  ジャポニカ・デリコは、世界に通用するオーガナイザーの一人だ。長らくシンガポールを拠点に活動していた。日本の流行を作り出す第一人者だ。音楽もファッションもデリコが作り出す。  世界のデザイナーがデリコの目を気にして新たな作品を発信する。  そんなデリコも日本で何かを始める時は、藤尾集蔵の所に、人知れずお伺いに来る。  そこで、『凍てついた夜』の事を聞いた。 藤尾さんの伴侶、名都からミクオの話が出た時に、戦争を終わらせるためのフェスをやろう、という事になったのだった。名都が傭兵だった時に戦争の前線で出会ったミクオ。命懸けのエンジニアだった。戦争を見て来た男。ミクオならわかってくれるだろう。賛同してくれるはず。  あのライヴ・エイドのような注目を集めるフェスをやろう。    デリコは興味を持って『凍てついた夜』の音源を探した。 「これ、いいんじゃない? 『凍てついた夜』のために企画するのも面白い。 まだ、素人集団でしょ。」  文字通りのメガフェスの発想は、凍夜の声から始まった。 「この子、スターだわ。生まれながらの。」  デリコ事務所からのオファーで、当日の持ち時間は、20分、と言われた。 「20分か、長いな。」 「えー短いよ。プログレやるんなら足りない。」 「とにかく、合わせよう。練習だ!」 『凍てついた夜』はあまり名前も知られていないバンドだった。 ー本質と無関係なところでその存在を否定するもの。 ー侵略に正当性を持たせるもの。 ーここで足掻いてる俺を見つけて。 ーおまえが見つけ出すんだよ。 ーおまえが手を差し伸べるんだよ。 ー伸ばした手に誰も気がつかなくても。 ー声を上げるんだよ。 ー孤独はおまえの脳を侵略してくる。 ーひとりぼっちは頭を破壊してくる。 過激な歌詞を乗せて、激しい曲が好戦的だ。

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