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第139話 メガフェス 3

 凍夜の声が益々ハスキーになって掠れている。 「大丈夫か?」 「一回潰しちまうか?」 「大概にしろよ。人を何だと思ってんだよ。」 キースがノリノリだ。 「俺、こういうのがやりたかったんだよ。 ハードロック。」  喉を潰すほどシャウトしている凍夜が、セクシーで、ちょっと生意気で。  ミコトはハラハラする。座って肩で息をしている凍夜に水を渡す。ペットボトルを投げる。 「ミコト、飲ませて。」 ミコトは水を口に含んで、口移しに凍夜に飲ませる。蓋を開ける力も残っていない凍夜に命の水を飲ませるように。 「もっと。」 ミコトの口から美味そうに水を飲む。頭を抱いてもたれかかった凍夜が幸せそうだ。 「声がガラガラだね。」 キースも渾身のドラムで汗だくだ。 「凍夜が甘えてるよ。いいなぁ。」 ミクオが笑ってキースにタオルを投げた。 「これじゃ、TKOだ。まだ、負けてないよう。」  合わせて夢子を動かしていたサブが 「みんないい感じ。」 オタクが喜ぶようなのを作っている。  日ごとに前評判が高まってきた。 「あの、ライヴ・エイドを超えてるよ。」 チケットはソールドアウトだって。凄いプレミアが付いて高値で取引されてる。その分を寄付に回してもらいたいものだ。  出演依頼しているアーティストの顔ぶれが、錚々たるものだった。  海外から、あのレディ・ゲゲ。実力のあるパフォーマーで素晴らしい歌手だ。そして日本が大好きだと言っている。デリコの盟友だ。  世界的なアーティストがもう一人。 サド・ノーラン。日本に来てくれると言う。  あの数々の楽曲を提供して、素晴らしいアーティストを多く生み出した天才でもある。    1984年。伝説になったライヴ・エイドに出演したアーティストはほとんどが鬼籍に入ってしまった。だが、今も人気のアーティストは、いる。  ヒップホップもジャンル分する必要はない。 当時、ライヴ・エイドに出演を渋っていたアーティストは、断った結果、死ぬほど悔しがったという逸話がたくさん残っている。  今回、日本のアーティストも大勢出演が予定されている。日本の音楽シーンもなかなかの才能が見え隠れする。  あのラッパーRとDJM。難解なラップをみんなに届けてくれた。子供達にも受け入れられた。  そしてYK、KNU。カッコいいバンドがたくさんいる。 「みんな出たがってるよ、メガフェス。」 「俺たちでいいのかな?」 凍夜が自信たっぷりに 「フェスを見なかった奴は死ぬほど後悔するよ。 俺たちを見られなかった事に。」

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