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第140話 メガフェス 4
たった今も爆撃されて逃げ惑う人々がいる。人類は未だ殺し合いを止めない。アメリカが武器を供給しているイスラエルは、パレスチナに桁違いの攻撃をして殺戮を繰り返している。
ニュースで発表される死者の数が桁違いなのだ。子供も虐殺されている。病院も学校も避難所も見境ない攻撃に晒されている。
なぜ、戦争は無くならないのか。人類が未熟なのか。
「音楽の可能性に賭けたい。」
ミクオが言った。
「パワーバランスなんかいらないよ。
お互いに様子を見るために武装する。一触即発の核を持ち合う。
ライヴ・エイドの時は、アフリカの飢餓を救え、が合言葉だった。
戦争を止めよう、が今の切実な合言葉だ。
核武装はいらない。」
ミクオの言葉に力が入る。
世界の注目の中、メガフェスの日が来た。屋外にも、広いスタジアムを囲むように広い運動場が
出来ている。ぐるりと陸上競技用のトラックが囲んでいる。地続きに、隣接して屋外用の芝生のサッカーコートがある。
今日のメガフェスのために、チケットを取れなかった人の行列が出来ている。フェスは午後からだ。今、朝の6時。自由席、立ち見のチケットを待っている。
スタジアムに直に入れるように、バックステージ直結の無数のトレーラーハウスが並んでいる。
出演者用の控え室、兼楽屋になっている。
出演者の家族や関係者もそれぞれのハウスに集まってきた。
「俺たちは午後5時半から20分だ。」
『凍てついた夜』の当てがわれたトレーラーに、いつものメンバーが集まって来た。
「中は広いねぇ。普通に住めるよ。」
あゆむがサブの腕にぶら下がって嬉しそうだ。
今日はサブはバックスクリーンで夢子を動かす。凍夜の歌に合わせてアニメの夢子が踊るのだ。プロジェクターの操作。サブは自分が出演するような気持ちで緊張している。
みんな揃った。キースはシルバースパークルを運ばせて調整に余念は無い。ステージの真ん中に一段高くセットして貰った。
タカヨシとテツは、出力の大きいアンプの調整をしている。
ミクオは、ピアノをジヌに譲って、キーボードをやるらしい。ジヌのピアノをバックアップするように、鍵盤楽器は2台。使い慣れた物を持ち込んだ。
松ちゃんは慣れたサキソフォンの手入れを怠らない。
そして、気取った凍夜が、使い慣れたマイクを手にしている。そばにピッタリとミコトが寄り添っている。
楽屋のトレーラーハウスにノックの音。
「ハイ!みんな、アーユーオーケー?」
デリコが来た。
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