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第9話
夜も更け、9時になった頃笹倉は帰って行った。
その間に順番に風呂を済ませた雪と馨は、各々が部屋へ下がっており、雪は笹倉が帰る段階で羽織を羽織って送りに出向き、そして頼政のお風呂の準備を整えてからまた部屋へ戻る。
風呂の世話などをしなくても良いと言われてはいるが、雪は頼政が部屋へ来るまでは布団にも入らずに、部屋に置いてある柔らかな椅子に腰掛け本を読んだり、机で勉強をしたりして待っているのが常だ。
「寝ていていいと言っているのに」
寝巻きの前を緩やかに着こなして戻ってきた頼政は、椅子で本を読んでいる雪に近寄り
「無理しなくていいからな」
と髪をなで、持っていた手拭いを椅子の向こうにある木の椅子の背もたれに掛けた。
「無理はしていませんが、お世話させてくれないからせめて、と思って」
布団へ向かった雪は、上掛けをめくって頼政が寝やすいようにして、隣の自分の布団の上に座る。
頼政も雪がめくってくれた布団の上にあぐらをかき、
「今日は大人しく寝よう。昨日は無理をさせた」
「無理なんてしていません。私は…嬉しいんですから旦那様はそう言うお気遣いはしなくても…」
「まあ、傷は1日では治らないからな。また治った頃に…」
そう言いかけた時、雪が頼政の膝に頬を寄せて寝転んできた。
「そんなの…待ちきれなくて毎日泣いてしまいます…」
睦ごとが関わってくると、雪は積極的だ。睦ごとと言うよりは優しくされたい一心で叩かれたいし、そして愛されたい。
雪とこう言うふうになったのは、雪が15になった頃だった。
最初の頃白皮症の検査で大学の研究室に連れていったり、その帰りに甘いものを食べさせたり、服を買い与えたりしているうちに、優しくされるだけの雪が何故か笑わなくなっていった。
撲 たれて、優しくされると言う雪の中の決め事がうまく機能しないことに、精神が追い詰められたのだろう、一人で部屋へいる時に自らを傷つけると言う自傷を起こすようになったのだ。
頼政にしたら、優しくし続けたら次第に…と思っていたのだが、自傷が発覚してすぐに友人の精神科医に相談をしたら、『まずは気持ちを満たしてやることだ』徐々にじゃないとこう言う風になってしまうと言われ、考えの甘さに歯噛みした。
じゃあ何を…と思った時に撲 たれることを望むなら、頼政にも負担のない方がいい。
当たり前だが無闇には殴れないのだから。
そう思ったらやはり手段は一つだった。
頼政の嗜虐趣味…教鞭を執るようになってからは時間がなくてそういう秘密クラブにも行けてはいなかったが、それをするのなら…雪はどうだろうか。
交接を伴わなければいいことであるし、ある程度までは雪の気持ちも解きほぐせるかもしれないと考え、あまり酷くないような事をまずは…と用意をしてある日それに臨んでみた。
鞭で打つのを始めたのは14の頃だったが、その次ぐ日からすぐに自傷行為はなくなり、少しずつ笑うようになっていったのをみて安心したものである。
交接はそれから1年後の15の時で、元々男性との交接も趣味としていた頼政が健気に鞭打たれる雪へ心が持ってゆかれ、思わずしてしまった口付けを雪が受け入れてくれてから、こちらも少しずつ関係を進めていったのだ。
今ではお互いが愛おしいと思いあえる関係である。
しかし、そろそろ打ったり痛くしたりするのはやめなければ、と思っているのも事実だった。
そんな事をしなくても愛されていいと、どうしたら伝えられるのか…。
雪はそのまま少し這い、頼政の中心へ顔を埋めた。
頼政は寝巻きの時は下着をつけないから、そのまま頼政の中心へと唇を寄せすっぽりと咥えてしまった。
「こらこら、やめなさい…今日は休む日だ…んっ…」
もう8年ほど雪と交接している。舌技は自然と身につき、今となっては頼政も時々翻弄される。
「笹倉が、雪のあられもないもない姿をまた見たがっていたぞ」
頼政は時々自分たちの行為を笹倉に見せつけることをした。
これが先ほど笹倉の言った『スペシャルな酒の肴』である。
しかしこれには理由があって、実は笹倉の男性機能がここ1年程機能しなくなっているのだ。
それを頼政に相談しているのだが、なかなか上手くはいかないようで、この行為を見せると言うのは頼政なりの治療法でもあったのかもしれない。
笹倉は酒を飲みながら面白そうにそれを見るだけで、鞭で打たれる姿やそれにより声を上げて悦ぶ姿が見ていて楽しいらしい。
しかしそれを見てもなお笹倉の身体には何も起こらず、どうしたものかと後日話し合いは続いていた。
雪もその時は何故だか普段よりも気持ちが盛 り、感度が増すのでその遊びは嫌いではなかった。
頼政の言葉に見られている時を思い出し、口を離して頼政を見上げると
「また…お待ちしています、とお伝えくださいね」
そう言って再び唇を寄せた。
「雪…仕方ないやつだ。それじゃあ今日は意地悪をしてやる。お前を打たずに、優しく抱いてやることにした」
雪は慌てて顔をあげ
「それはいけません。ただ優しくされるのはダメです…」
「雪はそうされてももういいんだよ。叩かれなくても愛されていいんだ。私はお前を愛しているし、叩かなくても抱きたいと思う。そう言うのは悪いことじゃないんだ」
頼政の膝の上で雪の顔が、少し解らなそうに震えている。
「そんな震えなくたっていいんだよ。もう雪を責める人はもういないだろ?責められなくても愛されていいんだから。もうわかってきているはずだ」
頼政の膝から自分の布団の上へ戻って正座をして、雪は
「頭では…理解しています。旦那様のお気持ちも伝わっていますし、もちろん雪も旦那様を心よりお慕い申しております…けど…身体が…そう言われてしまうと身体が動きません」
積極的に頼政を咥えた雪だったが、今のように引いてしまうのだ。冷めてしまうように引いてしまう
頼政も雪の被虐的な嗜好はわかっていた。ただそれが生来のものか、母親の仕打ちのせいかは今だ判別がつきかねていた。
もう少しなのに…
その辺りは頼政も歯痒いところなのである。しかし…まあ十中八九は…とも思ってはいた。つまり生来のものかも…とは。
「わかった…雪、こっちにおいで」
雪はそう言われて這うように頼政の元へ行き、指示通りに向かい合って頼政に跨った。
「傷があるから今日は叩かないけれど…今日はこうしてやろう」
そう言って両手で雪の寝巻きの前を少し乱暴に開き、露出したピンク色の両乳首を摘んで思い切り捻り上げる。
「ひっうくっんんっ」
雪が伸び上がり、頼政の肩に両手を置いて声を上げた。
「い…た…あぁ…」
痛いと言っている顔は既に上気して微笑んですらいる。
「これでは不満か?」
「もっと…もっとひねってくださいませ…もっときつく」
言われた通りに頼政はより強く捻り上げ、乳首が伸びてしまうのではないかと言うほど引っ張ったりもした
「んんっぅっああっ」
伸び上がって雪は乱れる。
「旦那様…旦那様ぁ」
雪の髪を引っ張り口を吸う。捻りながら口を吸うと、閉まらない雪の口から唾液が流れそれを啜るように口を吸った。
「旦那様…お慕いしております…」
口を吸われ、唾液を吸われた雪は焦点の合わない目で頼政を見下ろして、愛おしそうに髪を混ぜた。
頼政は雪の腰を上げさせて、起立した己を雪の尻に当てがうと
「ゆっくり座って…」
と乳首を撫でながら誘い、胸を掴んで下へ降りるよう促す。
「あ…あぁあ…ぁ…」
頼政の肩に額を当てて、自らに侵入してくる頼政を受け入れた。
「もっと…胸をいじめてください…雪だけが気持ちいいのは…勿体無いですから罰を…」
その言葉に頼政は切ない顔をして、言われた通りに乳首を捻りあげる。
「あああっくっ…っ…あぁ」
捻られると結合部分が締まり、締まると中で『頼政』が刺激した。。
胸と中の刺激で、雪は体を揺らした。
上下に揺らし中を刺激する。そして胸を押し付けて乳首の痛みを無意識に催促もする。
頼政は乳首に唇を寄せた。
「やはり雪は…生来の淫乱なのかもな…」
その言葉にまた高揚する。
寝巻きの上半身が雪の肩から外され、腰紐に引っかかっただけの寝巻きの下で交合は続けられていた。
乳首に歯を立てると、雪がまた上に伸び上がってそして降りてくる。その繰り返しが結合部を摩擦して2人に快楽をもたらしてくれた。
「雪は淫乱ですか…嬉しい…旦那様にだけ…です雪がこうなのは旦那様にだけ…ああっ」
今日は行灯も何もない。
不意に始めてしまった行為は煌々と明かりのついた部屋で営まれていた。
まだ時間も浅い中のことに、馨も寝ずに起きている。
細く障子を開け、覗くように正面の部屋を見つめた。微かにだが聞こえる雪の声。
ー今日は打たれないんだな…声も微かで聞き取りにくいー
もどかしく思いながらも手は自身を激しくしごいていて、昨夜の記憶も織り交ぜて、微かに聞こえる声と記憶で懸命に扱いた。
「旦那様…あっああっ」
次第に上がる声は大きくなり、雪は頼政の上で精を吐き出した。
「私はまだだ…」
頼政はそう言って雪を抱き抱え布団へ寝かせると、そのまま激しく突き始める。「あっあっああっ勿体無いです、あっ気持ちいいだけでは申し訳…ああっ」
芯から根付いたものはまだ消えそうにないが、それでもだいぶ受け入れることに慣れてきている。
「いいんだよ、雪。私はお前が気持ちいい姿を見るのが好きなん…だ。はっ…それではだめか?」
頼政の息も上がってきて、雪を攻め立てる腰も早まる
「いいえいいえ、嬉しい…ああ…気持ちいいっとっても!あ…も…もう…ああっ」
激しい突きに雪は意識せずに接合部を締めつけ、その刺激で頼政は腰を一旦止めると、快感を感じながら雪の中に精を放っていった。
雪を抱き抱えて、しばらくゆっくりとする。
「愛おしいな、雪」
「旦那様…」
見つめあって再び唇を合わせる。今度は舌を交わし、ゆっくりと味わうように口を吸いあった。
暫くすると頼政は起きあがり、廊下の障子までゆくと少し開けてそこに置いてある桶を手にする。
桶に手を入れると、いつもと同じ温度でお湯が汲んであった。
ートキにも感謝をしなくてはだなー
苦笑して桶を持って布団までゆくと、手拭いを浸し絞ったものでまずは雪の身体を拭ってやり、何度か濯ぎながら自分にかかった雪の精や、汗を拭い、そして最後に雪の尻を拭ってやる。
出来るだけ中に残らないように指でかき出してやって、手拭いで拭いそれを桶にいれて終わりにする。
雪は交接の後はぐったりと動けなくなるのだ。それをいつも申し訳ないと朝一番で謝るのだが、この行為は頼政は嫌いではなく、毎回気にするなと笑っていた。
馨も、大きく聞こえた雪の声で手の中に精を放ち、それをまた下帯で拭ってすぐに布団へ潜り込んだ。
いけないことだなとは思うが、聞こえてきてしまうので身体も反応してしまう。
いつか、生で雪さんの乱れた姿が見られるのだろうか…そう考えるだけで再び起立してしまい、馨は舌を鳴らして再び手を添えていった。
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