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第3話『最悪』
話し合いの末クラス替えもなく結局は同じ学校同じクラスで学校生活を送ることになってしまった
「…………」
「その、井草くん?この前はごめん」
朝。亘流と彩歌の後ろに隠れながら三鷹悠太からの謝罪を受けた。
「抑制剤も飲んできたし今後は距離感も気をつけるからもう少し殺気を、その、控えてもらえたらなぁと思いまして」
終始黙り込んで隠れながら威嚇している俺にたいして気まずそうに話してるし亘流も彩歌も返事はしてあげなよと言うけれど、、
「…………甘いんだよ」
「え」
「薬飲んできたとか言うけどお前甘い匂いする、薬が合ってないんじゃないの」
抑えきれていないのか地味に甘ったるい匂いが鼻を突いてくる、気持ち悪いのに心地いい、頭が混乱する
「ご、ごめん……でも薬は合ってるはずなんだけど前の学校にいたΩにも最後までαだってバレなかったくらいだし」
「え。そうなの?」
彩歌が驚いた顔をしてそう聞いていた
「うん」
「でも確かに私や亘流も尚道が反応するまでβだと思ってたし納得かも、ね」
「そうだな、尚道そんなに匂いする?」
亘流の問いかけに間髪入れずに答えた
「する。絶対してるっむっちゃ地味だけど服に着いたタバコの匂いぐらいの強さ」
「例えが分かりずらいよ」
「尚道イラつきすごくない?」
「だってコイツの匂いがっ!」
「あの」
「なんだよ!!」
話に割り込んでこようとしたそいつに思わず声がでかくなる、一瞬申し訳ないと思うけどこっちはそれどころじゃないトラウマ級の要注意危険人物にしか見えないてか本能がそう言ってる絶対!!
「その、匂いに関しては井草くんもで」
「はあ?」
「さっきから地味にきてちょっときつい」
そう言うと鼻を少し押えながら俺を見てきた
「ちゃんと薬飲んできた?//」
若干頬を赤くしながら言われて背筋がゾワッとする掴んでいた亘流と彩歌の服を強く掴み直して睨みながら言い返してやった
「飲んできたよ!!結構強めなやつ!」
「でも絶対してると思う」
なんなんだよコイツっ
ヒート期間もすぎたし少なくとも次のヒートまで1ヶ月はある筈だしその間はΩもβと変わらない筈だしその上で薬飲んできたんだから出るはずないっ
「佐藤くん!」
「おわっ、えっ何いきなり∑ 」
同じクラスで同じαの佐藤くんに聞いた
「俺、匂ってないよね」
「え、えっと、この距離では全く??」
戸惑って困った様子で答える姿に申し訳ないと思いながらも確かに三席横の位置からじゃ証明できないので近づくしかないのだけれど
「その、言葉悪くなって申し訳ないとは思うんだけどあの時のヒートの匂いがやばくて、出来れば近づきたくはない、かな」
気まずそうに断った佐藤くんにやっぱりと思うαからしてもΩの俺は要注意人物だ今まではヒートが来る前だったから近くにいてもお互い平気でいれたけど今は違う、しかも初回があれだし
「ごめん……巻き込んだ」
佐藤くんは悪くないのにイラついて
こんなの八つ当たりだ、飛び火
「ぃゃ、その…………はぁ亘流。彩歌」
佐藤くんが二人を呼んだ
首を掻きながら気まずそうに
「フェロモンって手首からも出るから二人が守ってくれるって約束できるなら俺も薬常備してるし手を少し嗅ぐくらいは出来ると思う」
佐藤くんも怖いはずなのに
そう提案してくれた
今までの情があるのだろう
そこそこ仲も良かったから
少しだけ、頭が冷えた
俺は自己中心的なことを口走って
「ただし二人の隙間から手出すだけ少し嗅ぐだけだからっ井草が俺のこと怖いなら話は別だし今までどおりは無理だけどαとΩだとしても友人だと思ってるから力にはなりたい」
「……」
そう答えてくれた事が嬉しかった
俺産まれたのがこの時代で良かった
佐藤くんが友人でよかった
「尚道どうする?」
「佐藤くんはこう言ってくれてるよ」
亘流と彩歌の言葉に頷いた
怖く無いわけじゃないけど
項を噛まれない限り番にはならないし
チョーカーだって一応つけてきたし。
「じゃあ、ちょっとごめんな」
席を立って恐る恐ると近づいてきた佐藤くんが俺の手を嗅いだけど変な間に一瞬ヒヤッとする
「に、におう……?」
「え。全然匂わないんだけど??お前ホントにあのヒート起こした本人?」
驚きと戸惑いの表情
一応の確認で再度嗅いで確認されたけど無臭に近いヒート期間外の安全な匂いだと言われた
「そ、そっかよかったありがとうごめんな」
「全然いいよ。正直びっくりしてる俺αとしては担当医から中度だって診断されてるから警戒してたんだけど井草ってどれくらい?」
「重度寄りの中度だって言われた」
「俺より上のΩに反応出来ないってことはマジで薬効いてるんだろうし……てなると?」
俺を含めてみんなの視線がアイツに集まった
「ぇ、や待っ!俺も嘘言ってないよ!?初日で真っ先に井草くんの方に行ったのも匂いに引き寄せられたからで抑制剤飲んだ上でこんな状態になるの初めてで正直俺自身驚いてて」
慌てたように話す姿に呆れる
同時に信用ならないと思った
やっぱコイツ最低だ。
「ん、どしたの佐藤?」
亘流の一言に佐藤くんをみると何かを考えている様子で「ぁぃゃ」なんて濁しながら「三鷹くん少しきいてもいい?」と会話が始まった。
「三鷹くんのαって何度?」
「佐藤くんと同じ中度。ほんの少し重度寄りではあるけど誤差の範囲って言われた」
「さっきの話じゃ今までは薬飲んでればΩ相手でもバレなかったんだよね?」
「うん送別会でCOしたら青ざめた顔されて」
そりゃなるだろ同情する
「だからここでは挨拶の時にCOする予定だったんだけど目が合った瞬間薬飲んでたのにマジやばくてあれでも抑えてたつもりで」
とか、様子を伺うように俺を見るソイツに思わず威嚇しちゃう変わらず地味で甘ったるい匂いが微かにする
「井草。今から話す事は三鷹くんと同じαの立場としてなんだけどちょっといい?」
「ゎ、わかった」
「まだ授業では習ってない範囲だけどαって結構Ωの匂いに敏感でそれは軽度中度重度どのレベルでも少しでも匂いがあれば気づくのよ。今みたいに手首の匂いなんて嗅げば一発で」
「うん」
「しかも井草は俺より上のΩなわけだからそれを感知出来ないとなるとちゃんと薬が効いてる証拠だしヒート期間外の証」
「だからコイツが嘘をっ」
「ぃゃ問題はそこじゃなくて」
言葉を遮りながら説明を続ける佐藤くんにハテナが飛んだ
「αって少しでもフェロモンに当てられてるαを見れば本能でわかるのよ絶対」
「!?」
「これは同じ相手からフェロモンに当てられないための防衛本能からくる警告みたいなもんなんだけど三鷹くんからはその症状が出てる」
え、えっえっ、ちょっと待って
それってつまりは俺もコイツも
「お互い嘘をついて無いって事?」
彩歌の質問に佐藤くんが頷いた。
「俺とさほど変わらないのに薬を飲んだ上で三鷹くんにだけ症状が出てる。でここからは俺の推測だし仮にそうだとしたら始めてみるんだけどαとΩのなかには特に惹かれ合う人達がいて他のαやΩでも感知出来ない微かな匂いにも気づくらしくて……その」
嫌な予感がしてちらとあいつをみると
ぱちっと目が合ってしまった
「そうゆうのを『運命の番』てゆうらしぃ」
運命の番、βにはあまり馴染みのない言葉かもしれないけどΩやαには診断された日に必ず薬やヒートやラットと同じくらい重要な事として説明をうける事象だ。
通常項を噛まれて番になってしまってもαは新しく番を作れるしΩは捨てられれば次が無いけど運命の番は違う、番になればαも新しく番を作れないしΩもその相手にしかヒート時にフェロモンを発さなくなるからつまりはほぼ対等な立場になれるものなんだけど
「尚道?」
「どした?」
「ぃ、ぃゃ……そのっ」
でも問題はそこじゃなぃ
運命の番だった場合お互いに認めてしまった時には病的な程に相手しか見えなくなる特にαは一途に尽くす一生涯をかけて
「運命の、番」
「!」
「そっか、運命の番」
目をキラつかせて俺を見るあいつの目から声から雰囲気から全部が腑に落ちたような表情で
「納得いった!!」
「納得いかないでっ!!」
全力で否定したっ
「なんで!?だって今ので全部説明がつくし筋も通るし俺は納得いったよ!初めてあった時のあの感覚っ井草くんもあったよね!?」
「っ…………そ、れは」
言い返せない自分がいた
気持ち悪さの奥にある心地良さ
拒否しきれない、
あれがもし惹かれている証拠なら
「俺っ井草くんと番になりたい!」
まるで転校初日の再放送を見ているかのようなその満開スマイルを再開した高校生活初日にまさかのプロポーズとも取れる発言と共に見る羽目になるなんて
「……ふ、ざけな」
「ん?」
「ふざけんなっ!!だっ誰がお前なんかとっ非常識で距離感近いしっ甘ったるい匂いだし!」
そう突っぱねるけどアイツの目はまっすぐと俺を見てて油断したらその目に惹き込まれそ
「とっ、とにかく!」
睨みあげながら亘流と彩歌の後ろに深く隠れてハッキリと言ってやった
「番になんかなるもんか!!」
どうやら俺の高校生活ぃゃそれ以降も平穏はおろかコイツとの付き合いは長くなりそうだ。
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