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第5話『変化』

「井草くんおはよ〜」 「はよう。」 「え、尚道が挨拶返してる」 「尚道が挨拶返してるぅー」 「うるさいなぁ//」 ヒート期間も終わり亘流と彩歌の風邪も治った週明け久々三人で登校した朝、三鷹くんからの挨拶に応えただけなのにすごくビックリされてしまった。 「なに私達が風邪の間に何かあったの?」 「別に何もないよ」 「ぇーまぁ尚道もヒートで大変だったもんね休んでた期間もほぼ同じだし関わる暇無いか」 「そうだよ」 とか言いながら1日だけあったんだよな、なんとなく言いだしずらい 「柄本さんも早川くんも治ってよかったね」 「ありがとう〜。さっき三鷹くんも体調崩してたって聞いたけど大丈夫?」 「平気平気ありがとうね」 「あんま無理すんなよ」 「早川くんもありがとう〜」 クラスの反応からしてもそうだけど俺のヒートに当てられたから体調崩したのに言わないでいてくれてるんだな 「井草くんは大丈夫?」 「え」 「体調面、しんどくない?」 「それはまぁうん大丈夫。」 「そっか、よかったぁ」 ほっとしたような優しい笑顔だった 今の笑顔は作り笑顔じゃないといいな 朝のHR、午前の授業、いつも通りの1日 三鷹くんのグイグイも相変わらずだけど 「俺も一緒にお昼食べたーい」 「私達はいいけど」 「尚道は大丈夫?」 二人からの確認に頷いた 「いいよ」 「やった〜ありがとう」 嫌な事には変わりないけど前ほど嫌だとは思わない自分がいる、それにお礼が言えてない 「井草くん今日はパンなんだね」 「うん。朝時間なかったから。」 「尚道パン好きだもんねぇ〜」 「彩歌だってパン好きでしょ?」 「うん好きだよ。少しちょうだい」 「ゆうと思った。どうぞ」 「ありがとっ、ゎこのメンロンパンおいひぃ」 「でしょ」 「ホント尚道も彩歌も甘いの好きだよね」 甘いの全般あんまり得意じゃないからか呆れたような口調でそう話す亘流に 「あのさ確認なんだけど早川くんと柄本さんって付き合ってるんだよね?」 三鷹くんが不思議そうな顔でそう聞いてた。 「うん。そうだよ。」 「急にどうしたの?」 亘流も彩歌も首を傾げてた 「二人ともだけど井草くんの食べかけ食べるのに抵抗ないの?」 俺達にとっては当たり前の事だったし三人の中でも話しはしててまぁいいかで済んでいた内容だったからその質問になんて答えればいいんだろうみたいな間が少しだけあいてしまった、その所為か三鷹くんがはっとしたような顔を一瞬したあとすぐに『ごめんね』と言った。 「ぃゃ〜ちょっと疑問に思ってきいてみたんだけど不躾な質問だったかも」 軽い口調でそう誤魔化しながら笑っている顔はこの前見た作り笑顔そのままで 「友達間の回し飲みとか食べ回しって有るもんね今後は気をつけるよ〜ごめんごめん」 「えっと私は全然大丈夫だよ」 「俺も謝ることじゃないって」 「ならいいんだけど一応気をつけるよありがとうね柄本さんも早川くんも優しいなぁ」 この前きいた空気が読めないって多分こうゆう発言の事を言われてたんだろうな、 「三鷹くん」 「!?」 二人の前では初めて俺が『お前』や『こいつ』以外の呼び方をしたからか彩歌と亘流は驚いていたけど構わず俺は話しかけた。 「甘いの苦手?」 「ぇ、ぃゃ俺はどちらでも??」 「じゃあ。はい」 「!?」 三鷹くんの口元にメロンパンを持っていくと三鷹くん含めて更に二人も驚いた顔をするもんだから少しだけめんどいなとは思ったけど、今更だ。 「え、い、井草くっ」 「あ。もしかして潔癖だったりする?」 「それはないけど、ぁの」 「じゃあいいや。一応俺も彩歌も口つけて無いとこだから食べてみなよ」 「で、でも」 顔を赤くしてオドオドとする姿に少し笑いそうになっちゃった、ぃゃ若干笑ってたかも。 「友達間での回し飲みや食べ回しは有るんでしょ?これもそれだよ」 我ながら意地悪な言い方してんなと思う 迷ってはいたけれど恐る恐るひとくち。 「どう?」 「ぉ……ぉいひいれす///」 「ふはっならよかったです」 こうやって経験積んでけば少しは自然と笑える時がくるかなとか思ったりした。 「二人とも絶対何かあったでしょ」 彩歌の声に俺もはっとして二人を見た 「別にない!」 「いや絶対なんかあったって。ね亘流」 「あっただろ。尚道のガード緩いし。」 「緩くない!」 「ゆるいよ」 「ゆるゆるだよ」 「あぁあもういいじゃんうるさいなぁ//」 たまらず残ったメロンパンをたいらげた 「はいっもう無いもう終わりっ!」 「ぇぇ、尚道のケチ私達だって三鷹くんの友達なのに二人だけの秘密作ってるぅ」 「抜け駆けだ〜」 「だから作ってないってば。あと亘流のその言い方は絶対楽しんでるでしょやめて」 「バレたか」 「逆にバレないと思ってたの?」 「流されないかなとは思ってた」 開き直ったぞこいつ。 「ねぇ」 「ん?」 三鷹くんの声に三人で振り向くと少しだけどもりながら『俺も友達枠なの』ときいてきた 「その、嫌とかじゃなく俺三人の後ろを勝手に付いて歩いてたから柄本さんの口から友達発言がきけるとは思ってなかったとゆうか」 その言葉に俺達三人は顔を見合せたあと最初に話し出したのはやっぱり彩歌だった 「私はずっと友達だと思ってるよ?一緒にいて楽しいし三鷹くん優しいもん」 「俺も友達だと思ってるし尚道だって今の言動見る限り友達認定してるって事じゃん?」 三鷹くんが不安そうに俺を見た まぁ…………否定する必要も無いし 「友達だと思ってますが何か//」 俺の言葉にようやく状況が理解できたのか一気に表情が明るくなって『俺もっ』と答えててその笑顔は作り笑顔には見えなくて安心した。 その日から四人で行動することが増えた まぁ増えたと言うより俺達が容認して その上で一緒にすごすようになったって いい方の方が表現としては正しいかも 「井草くん!柄本さんと早川くんもおはよう」 「はよう」 「おはよー」 「おはよう」 でも、結局お礼が言えてない 「そう言えば今日席替えだよね」 「そうだった」 「席近いといいなぁ」 なんだかんだと伝えるタイミングが分からなくて逃してばかりな気がする、どうしよ 「井草くん、井草くん?」 「え、ぁ。何」 「どの席がいいとかある?」 「ぁー窓辺がいいかな」 「景色好きだもんね」 「うん」 朝のHRのあと早速の席替え。 くじ引きの結果は彩歌と亘流が真ん中あたりの席、俺は窓辺ではあるけれど前の席が三鷹くんと見事に二組に分かれてしまった。 「早川くん達と離れちゃったね」 「そだね」 「…………不安だったら言ってね」 「?」 「先生に言えば席変えてもらえると思うから井草くんは周りがβの方が安心だと思うし」 たぶん周りに聞こえにくいような控えめな声量で伝えてくれた、確かにβの方が安心だ亘流や彩歌とも席が離れて不安はある、けど 「いいよ。三鷹くんなら」 「!」 俺の返しに驚いた顔をする彼に言った 「友達だし、二回目の時も手出さずにいてくれたし信用してない訳じゃない」 多分このタイミング、だよな// 「井草く」 「あの時はありがとう」 「……」 「助けてくれて、ずっと言えてなかったけど改めてお礼は言っておきたかったからそれだけ」 そっぽを向いて伝えたその言葉がむず痒くて 「ぅん、俺の方こそあの時の井草くんの言葉にかなり救われたからありがとう」 「……そ、ならよかった」 窓越しにうっすらと反射して見えた三鷹くんの顔はこっちが恥ずかしくなるくらい嬉しそうな顔をしていて素っ気ない返事になってしまって 「はーい。じゃあ1時限目の〜」 授業が始まってもしばくは前を向けなかった//

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