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18閉じ込められても、一緒がいい

「何もない平和が一番だな」  その日、俺は冒険者ギルドの鍛練場でサシュを訓練しながらそう思っていた。しかし、そうしていたら俺たちのところに街長から呼び出しがかかった。俺はなんか嫌な予感がしながら、サシュの手を引いて街の庁舎まで移動した。そこでここから先はカイト様のみでと言われた、だから仕方なく俺はサシュをその街役人に預けた。 「カイト、良い子で待ってるからちゃんと迎えに来てください」 「もちろん迎えに行くさ、だから大人しくしてろよ」 「はい、僕はまっています」 「俺もなるべく早くもどるぜ」  俺たちが集められたのは会議室で、俺の他にも数人の冒険者がいた。そして会議が始まったのだがいきなりとんでもないことを街長に言われた、俺は思わず聞き間違いかと思った。 「このブラッドの街をなんらかの結界で守って貰いたい」  俺は何を言ってるんだと思った、できなくはないがそれはかなり大変なことだ。他の者から無理だ、できない、と意見が上がった。俺もできるとは思えないと言って反対した、とそこで街長はそんな無理な結界が必要な理由を話した。 「実は隣のアキュの街で大凶作が起こった、それでアキュの住民が押し寄せようとしている。我が街にも非常時の備蓄はあるが、それはあくまでこのブラッドの街の民のものだ。」 「上のお偉いさんは何て言ってるんだ?」 「そこだ、どうしたらいいのか伯爵様に意向を伺う手紙を出したが返事がない。だからこの街の備蓄を出すことはできないし、他にアキュの街に手を貸していいものかも分からない」 「つまり何も出来ない状態で、飢えたアキュの街の民がこっちに向かってるのか」  ブラッドの街にも外壁があってまるく円を描き街を守っている、いざという時は街に入る扉を閉めて立てこもることができるのだ。でも、もし飢えた民のなかに優れた魔法使いが一人でもいたら、そうしたらこのくらいの外壁は魔法で吹き飛ばされてしまうのだ。だから街長は俺たちを集めたのだ、魔法に長けていて結界が作れそうな者を集めた、事情を聞いてしまうと俺はさっさと出て行くことにした。 「俺にはそんな結界は作れない、だから話を聞かされても無理だ。俺はこの街を出て行くことにする、ここで聞いたことは街の者には話さない」  俺の他にもニ、三人が同じように結界を作ることはできないと言って、ここでの話は聞かなかったことにしてブラッドの街を出ると言いだした。 「駄目だ、駄目だ、駄目だ!! どうにか結界を作ってくれ、作れるという者が出るまで会議室からは誰も出せない!!」  そうなると誰も部屋を出れなかった、結界を本当に作れないのか、それかしたくないということだった。街長は汗をかき頭を掻きむしっていた、まぁ上からの指示はないし、街を守れそうな方法も見つからなくて参っているのだ。厄介なことになったなぁと思いつつ、時間だけが流れていった。ブラッドの街はその間に外壁にある街の扉を閉めて、外からの襲撃に備えているようだった。 「誰か結界を作れる奴、いねーのかよ!!」 「きっと誰もいないのよ、こんな会議は無駄よ」 「俺もそうだと思う、早く解散した方がいい」 「時間しか経たない、全くの無駄な時間だ」 「もう夜です、どうされるんですか? 街長?」  俺たちからの言葉に街長はまた頭をかいて、そして何も良い考えが浮かばなかったのだろう、結局のところ彼はこう言った。 「結界を作れる者が出るまではこの部屋から出せない」  結局呼び出された者は会議室に閉じ込められることになった、俺は一人にさせると心配だからサシュを連れて来てくれと頼んだ。街長は頷いてすぐに街役人の一人が、サシュを俺のところにつれてきてくれた。 「サシュ、大丈夫だったか?」 「はい、カイト。大丈夫です、僕は待っていただけです」 「そりゃ、良かった」 「カイトの傍がやっぱり良いです」  そうして俺たちは会議室に閉じ込められることになったのだが、俺もサシュも一緒にいれば他に怖いものは無かった、ただいちゃいちゃ出来ないのが不満だった。 「カイト、やっぱりしたら駄目ですよね」 「俺は人に見られるのは嫌だ、サシュ」 「それじゃ、キスしかできなからそうします」 「ん、俺も顔中にキスしてやる」  正直なんてのんきなと周囲から俺たちは引かれていたが、俺にとってサシュといちゃいちゃするのは大事なことだった。そして会議室から出ていいのはトイレの時のみになっていた、それ以外は会議室に閉じ込められることになった。俺は窓の外が見えるガラスを見て、ブラッドの街が防衛に徹しているのが分かった。配られた毛布の中でサシュを二人で温め合いながら、俺はいちおう街長の話をしておいた。 「カイト、貴方ならでき、むぐっ」 「サシュは可愛いな、キスしてやるぜ。ほらっ」  サシュは俺が使えることができる魔法を知っているので、その魔法で街を風のバリアで守ることもできると知っていた。俺はそれを誰にも聞かれたくなくてサシュにキスして誤魔化した、サシュは皆といる時にきいたらいけないことだと判断して、それから手のひらに文字を書いて質問してきた、俺もサシュの手のひらに文字を書いて答えた。 ”カイトなら結界を作れるのにここにいる理由は?” ”風の大結界は凄く魔力を使う、この街にそこまでする必要がない” ”でもそれじゃ、ここから出れませんね” ”いつかは街長も俺たちを解放するさ” ”あの街長が自棄になってしまったら?” ”その場合でも俺たちは解放される、街長がおかしくなったと逃げればいい”  そうして、数日が経った。暑い季節じゃないのは良かったが、俺とサシュはお風呂が恋しいと思っていた。そして、とうとう街の外壁が破れたようだった。ブラッドの街に飢えたアキュの街の民が次々を入って食料を奪い始めた、街長はフラフラとガラスの外の光景を見て頭を抱えていた。 「これじゃ、結界があってももう無理だし、俺たちは帰ってもいいな?」  俺がそう言うと街長は力なく頷いた、そして俺とサシュは真っ先に会議室を飛び出した。この混乱するブラッドの街を一刻も早く出なければならない、俺はサシュを抱いて風の魔法を使いはじめた。そして街の庁舎を裏から出てすぐに俺は空へと舞い上がった、昼間だったが食料を巡っての暴動や略奪が起きていたから空を見ている者は少なかった。 「カイト、僕たち空を飛んでいます!!」 「風の精霊に感謝を、このまましばらく飛んで逃げ出すぜ!!」  俺はサシュと離れないようにロープで体を縛り付けた、それからしばらく空を俺たちは飛んでいた。サシュがその楽しさから大興奮で、俺は彼を落っことさなさいようにしっかりと抱いていた。途中でアキュの街らしきものも見た、人が焦げる匂いがしていたから近づかないで飛んで通り過ぎた。それからしばらく街はないかと空を飛んでいたら、閉門をしていない街を見つけたので近くの森に下りた。 「カイト、空を飛ぶって凄いのです!! また今度一緒に飛んでください!!」 「ああ、時間があったらまたな」  そうして俺たちは街に入っていった、街の名前を聞いたらティオの街だと言われた。それだけの情報で俺たちは街の中に入っていった、サシュはしっかりと俺の手を握り締めていた。そしてとりあえず風呂が個室についてる見つけて宿屋を見つけて、真っ先にサシュと一緒に風呂に入った。 「お風呂って凄く気持ち良いのです」 「本当だな、サシュ。背中を洗ってやるよ」  そうして二人で洗いっこして、ついでといってはなんだがエロいこともいっぱいして風呂を出た。サシュはそれですぐに眠ってしまったが、俺はブレッドの街はどうなったのかと思っていた。しかし、どう考えてもあの状況で俺にできることは無かった、できたとしてもその場しのぎにしかならなかった。だから俺もサシュのように忘れて眠ることにした、安全なティオの街で眠りに落ちた。 「何もできないことがこんなに辛いとはな」

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