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第10話 賑やかな食卓

 ダイニングへ行くと、父親が帰って来ていて、光の顔を見て唸った。 「んー……確かに母さんが言う通りのすごいイケメン君だな。びっくりしたよ。母さんがキャーキャーうるさいのも分かるな」 「そうでしょう? 芸能人みたいよねー。歩いていたらスカウトとかされない?」 「されませんよー」  光は穏やかに笑って答えるが、それは嘘だと思うし、なんなら彼はもう既に芸能人だ。  夕食のビーフシチューとサラダとパンを食べながら賑やかに夕食は始まった。  光はよく喋りよく笑った。  僕はあまりしゃべらない方なのでいつもは食事のときももっと静かなのだが、この日はすごく明るい食卓になっている。  父さんも上機嫌でビールをおかわりしてるし、母さんは言うまでもない。いつもより一オクターブは高い声ではしゃぎ笑っている。  光にはそこにいるだけで場を明るくする眩しいくらいのオーラがあった。  いつもの倍くらいの時間の夕食が終わったとき、光が一人暮らしだと聞きだした母さんが、ビーフシチューをタッパーに詰め、冷凍してあったいろいろなお惣菜のタッパーも渡していた。 「いいんですか? ……ありがとうございます」  にっこりと艶やかに光が笑うと、母さんは乙女のように頬を赤らめてた。それを後ろで見て苦笑する父さんと僕。  父さんも母さんも何度も「また来てね」と言うくらい、この日の上町家の夕食の時間は楽しく明るいものだった。

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