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第12話 怒りと嬉しさと

 光は時々学校を休んでUとしての活動をしているみたいだった。  その姿をファンとして誇らしげに思いながらも、どこか寂しい気持ちになりながら見守る撲。  光が休みの日は僕は独り孤独だ。  その日も自分の席で光の歌を聞いていると、以前光にコテンパンにやられた男子生徒がやって来た。 「よう、陰キャ。光がいないとドラえもんがいないのび太みたいだな」  そんなふうに揶揄して来たけど、僕は無視を決め込んだ。 「なんだー? 陰キャのくせに無視しやがるのかよ? いったい何聞いてやがるんだ? エロいものでも聞いてるのか?」  そう言って僕の手から無理やりスマホを取り上げた。 「返して!!」 「なんだー? この歌、聞いたこともないなー。やっぱ陰キャくんの聴くのは売れてないくだらん歌なんだな」  その男子生徒のことは怖かった。でもそれ以上に光の歌のことをけなされたことが頭にきた。 「……取り消せよ」 「あ、なんだよ? 陰キャ」 「この歌はくだらない歌なんかじゃない……!」  足が震える。でも光の歌をけなしたことを取り消させたかったのだ。 「推しをけなされて怒るなんて陰キャらしいな。光がいなければ何もできないくせに偉そうにするんじゃねーよ」  鼻で笑われる。悔しかった。  そのとき僕と男子生徒の間に凛とした声が響いた。 「えらそうにしてるのはおまえの方だろ」  光だった。  光は男子生徒に向かって怒りを露わにして。 「また殴られたいのかよ?」  低い声で恫喝する。男子生徒は舌打ちをして僕のスマホを放り出して去って行った。 「はい。スマホ」  光がスマホを拾ってくれ僕の頬に優しく手を添えてくれ、 「大丈夫だったか? ケガしてない?」  僕は男のくせにいつも助けてもらってばかりの自分を情けなく思いながらも頷いた。  光は僕の手を引き西校舎の裏まで行くと。 「Uのアルバムが出ることになりそうなんだ」 「えっ? ほんとに!?」  僕は落ち込んでいる気持ちも吹っ飛んだ。 「それでさ、明日の土曜日、ちょっとしたお祝いをしようと思うんだけどのぼる、来てくれるよな?」  行きたい。Uのアルバムが出るのだ。なんといってもファンとしてはお祝いしたい。  でも、陰キャの僕が行って、場を白けさせたりしないだろうか。  すぐに返事をしない僕に光は苦笑する。 「何迷ってるんだよ。大丈夫、来るのはおまえだけだから」 「えっ? 僕だけ?」 「そう。のぼるは俺の一番のファンみたいなものだから。一緒に祝って欲しいんだ。……来てくれる?」  甘い声で言われて、僕はブンブンと首を縦に振って頷いた。

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