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第20話 幼い恋心

 一生することはないと思っていたセックス。それは想像できない形で経験することになった。  相手は推しのUで、クラスメートの同性。  隣で横たわる光をこっそり盗み見する。  そこには生きる芸術作品と言ってもいいくらい綺麗な姿があった。  整った横顔のライン。鼻筋の通ったすっきりとした鼻、形のいい唇。眠っているのだろうか、今はその綺麗な澄んだ瞳は閉じられているけれども、長いまつ毛が色気を醸し出していて、なんとも美しい。  そんな輝くような光がなぜ僕なんかを相手にしたか不思議だ。  と、僕があまりにもジッと見てた所為か光が目を開けた。  僕は慌てて目を逸らしたがもう遅かった。光がにっこりと笑う。 「……ひ、光君、ね、寝てたんじゃなかったの?」 「寝てないよ。セックス終わって、すぐ寝ちゃうなんて素っ気ないじゃない。浸ってただけ」 「ひ、浸って、たって、何に?」 「セックスの余韻」 「……っ……」  光の答えに僕は体中から火が出るような勢いで真っ赤になった。  光が僕の方へと寝返りを打って問うてくる。 「良かった?」 「え?」 「俺とのセックス」 「~~~~~~っ」  僕はもうこれ以上真っ赤になれないというくらい赤くなった。体温も三度くらい上がったんじゃないかと思う。  そんな僕を見て光はクスクスと楽しそうに笑う。 「のぼるって分かりやすいね。 良かった、ちゃんとのぼるが感じてくれて」 「か、感じて、なんて、そんなこと……」 「俺はのぼるとのセックスすごく良かったよ? 女の子とするよりも気持ちよかった」  光は口元に緩い笑みを浮かべ、でも瞳は怖いくらいに真摯な色を浮かべて、そんな言葉を紡ぎ、僕の額にキスをした。  僕はすごく複雑な気持ちになった。  女の子とするよりも、か。  きっと光君はたくさんの女の子と経験があるんだろう。  でも男は僕が初めてで……それは多分単なる好奇心なだけ。  これをかわきりに光君は僕以外の男とも経験を重ねて行くのだろう。  そんなふうに考えると、僕の胸の奥はキリキリと痛んだ。  もう分かってる。  僕はきっと光君が好きなんだ。  これが恋心ってやつなのかな?   Uへの気持ちも含めて光君の全てが好き。  でも、どうしたらいいのかなんて分からない。  陰キャの僕には恋なんて似合わないから――――。

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