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第22話 壁ドン

 光といると時間が過ぎるのがあっという間だ。  ベッドの上でシーツに包まり、芸能界の裏話を聞かせて貰ったりしてるうちに時計は夕方の五時を指していた。  僕は脱がされていたTシャツとジーンズを身に着ける。 「光君、僕、そろそろ帰るね」  ベッドに寝そべり……モデルのように絵になっている……こちらを見ていた光が自分もジーンズだけを身に着けた。  そしてこちらに歩いて来ると、僕の体を壁に押し付け自分の腕の中へと閉じ込めてしまう。 「ひ、光君?」  両腕でのいわゆる壁ドンに僕の声は一オクターブ上がった。 「光でいいよ。君は要らない」 「え? でも……」 「今晩泊まってけよ。体、まだ辛いだろ?」 「でも」 「でも、は無し。はい、家に電話して」  光が自分のスマホを僕に渡した。  小さい頃から既に人見知りが激しかった僕は、友達の家に泊まったことなどなかった。  それでも光の言うがままに家に電話したのはまだ光と離れたくなかったからだ。 「安心して、今夜はもう何もしないから。ただ俺がのぼると離れたくなかったから」  『離れたくなかったから』  光のそれが本心なら僕たち二人同じように思っていて、そのことが僕を有頂天にさせる。  期待という名のコップにまた一滴、光も僕のことを思ってくれてるんじゃないかという気持ちがたまる。  夕飯は光が「何か月ぶりかなあ」とか言いながらご飯を炊き、僕のお母さんが持たせてくれたお惣菜をレンジで温めて食べた。  光はパッと見た目のクールな印象と違い、よく笑う。  光の笑顔は僕の心を幸せで満たす。  こんな陽な光が僕みたいな陰なやつを気に入ってくれたことがとても幸せで。  また泣きそうになったけど、流石にこらえた。

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