「お湯の温度、熱くない？　のぼる」 　バスルームの入り口の向こう側から光の声が聞いて来る。 「ちょうど気持ちいいよ」 　一足先にお風呂に入らせてもらい、広いバスタブにのんびりと使ってると、いきなりバスルームの扉が開き、裸の光が入って来た。 「ひ、光君っ！？」 「光、だろ。君は要らないって」 「それより何で入って……それも裸で……」 　僕が光から見えないようにバスタブに深くつかると、何をいまさらと言ったような表情で、 「洗いっこしようと思って」 　悪戯っぽく笑う光。 「え、遠慮しとくよ」 「えー？　何で？　いーじゃん」 　よいしょっと光が僕がつかるバスタブに入って来る。光の部屋のバスタブは大きく男二人が入っても窮屈ではない。 　光が手に持っていたボトルの液体をバスタブに入れてかき混ぜると、ブクブクと泡が立ち泡風呂になる。 「うわあ。外国のお風呂みたい」 　恥ずかしさも忘れて僕が素直に感動していると、光はクスクスと笑った。 「泡風呂初めて？　のぼる」 「うん。入浴剤ならよく入れるけど」 「こっちおいで、のぼる」 「え……でも」 「ほら」 　手を引かれて、光の胸にもたれかかる形になった。 「洗ってあげるから」 　そう言うと泡をたっぷり纏った光の手はゆっくりと僕の首筋から鎖骨へと滑って行く。そしてお湯の中に隠された胸の突起に辿りつくと、くるくると円を書くようにしたかと思うとそこを摘まみ上げた。 「あっ……」 　僕の口から自分のものだと信じたくないような声が出て、その声がバスルームで反響して響く。 「あ、感じちゃった？」 　光はとてもうれしそうだ。 「な、何もしないって言ったくせに……」 　僕が消え入りそうな声で訴えかけると光は澄まして、 「ただ洗ってあげてるだけ。のぼるが勝手に感じてるんだろ」 「ひどい」 「そう思うならのぼるも俺のこと感じさせてくれたらいいだろ」 　光の挑発に乗る形で僕は泡を救うと、光の首筋から綺麗な鎖骨までを洗い、それから彼の乳首を撫でるように愛撫した……のだけど。 　光は涼しい顔だ。 　これは経験値の違いなのだろうか？　 　そんなふうに思うと悔しくて悲しくて、腹立たしくて。 　僕はお湯の中に隠れた光の雄へと手を伸ばしていた。 　両手で包み込むようにすると、光の雄はぐんと硬くなった。 「……っ……のぼる……」 　掠れる光の声。僕は光が感じてくれてるのが嬉しくて拙いながらも彼の雄を一生懸命擦り上げる。 　すると仕返しとばかりに光の手も僕の股間へと伸びて来て。 　泡で見えないお湯の中、僕たちはお互いの性器を洗い合いっこという名の愛撫をした。 　お互いに限界が近づく。 「のぼる、一緒に……」 「光く……光……」 　僕たちはギュッと抱き合ったまま同時に昇りつめたのだった。