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土曜日の慣れない初デート②
***
一歩店の外に出て後ろを振り返ると、昨夜は見えなかった店の全体が目に入った。濃い青色で塗られた壁と店内を覗く事ができる小さな窓。真夜中だと手を引かれて招かれないと通り過ぎてしまいそうな色合いだった。
そういえば、あるべきものが見当たらない。
「なぁ、店の名前は?」
「ん?あぁ、いいのいいの。いらないから」
店名がないなんて不便じゃないんだろうか。
まだ不思議に思っている俺の背中を匠が押す。
「この店は店名が必要じゃないやつが来るから。あったら不便なんだよ」
「意味わかんない……」
「お子ちゃまには難しかったかー」
「俺は!子供じゃ!ない!」
「法律的に子供の枠でしょ、何言ってんの」
「そ、そうだけど、いやそうじゃなくて、お前の場合……!」
「あぁ、大人扱いして欲しいってことか。なら今すぐしてやるけど」
背中を押す両手が肩へと移動し、上から圧力がかかる。
鬱陶しい重さに後ろを振り向くと吐息がかかりそうな距離に匠の顔があって俺はギョッと固まった。
「大人扱い、してほしい?」
薄い唇が目の前まで迫って、俺にだけ聞こえる声量で囁く。今朝のホットケーキが脳裏をよぎった。
「い、…………いらない」
「そ?……残念」
フルフルと首を横に振ると肩にかかる力が消える。
改めて背中をポンポンと叩かれて、俺は渋々店を後にした。
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