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土曜日の攫われた夜⑤

「君は?」 「渡流」  渡流と名乗った少年はその塊……四人の子供の中で丁度真ん中あたりの年齢に見える。  真ん中といっても一番下は俺と目も合わせることを拒絶している小さな小さな女の子が二人で、一番年上に見える子もよくて俺より一つか二つ違うぐらいの女の子だ。  渡流は唯一男で、その小さな二人を同じぐらい華奢な体と腕で抱きしめて宥めていた。 「渡流?」 「心配しないで」  藍色の双眸が俺を捉えて僅かに笑った。  女の子の腕に回っていた小さな指先が俺に向かって伸びる。俯いて垂れた俺の前髪を人差し指で掬うように遊ぶと渡流はすぐにその手を震え出した女の子の腕に回した。 「絶対大丈夫だから」  俺よりも年下の、俺よりも小さな渡流が強い口調でそう言った。意味もわからなければ、正直年齢にそぐわぬ異様とさえとれる態度に俺は息を呑んだ。  渡流の隣に三角座りをして座り込む一番年上に見えた女の子に視線を向ける。  するとその女の子もやはり訳がわからないのだろう。フルフルと首を横に振ったその目には深い混乱と恐怖だけが見て取れた。 「わた――」  もう一度、名前を呼ぼうとした俺の声を掻き消すように地下室の扉が開いた。

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