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日曜日の目覚め①
目が覚めた時、目に映ったのは知らない天井だ。
そのまま俺はぽけーっと天井を眺め続けた。
俺は何をしてたんだっけ、とか。
俺は何でここにいるんだっけ、とか。
どうしてここで寝ているんだろう、とか。
疑問が次々と湧いてくるが、どれ一つだって自分で出せる答えがない。
考えても無駄ならとりあえず起きあがろうと、上体を起こせば腕から管が一本伸びている事に気がつく。
それは枕元にまで続いていて、テレビとかでしか見たことのない物に繋がっていた。
点滴だ。
「和室に点滴…………」
どういう現状なのかますますわからなくなる。
今何時だろうと周囲を見渡すと枕元に見慣れた携帯と財布が置いてあった。
「俺の……ケータイ。っケータイ!!?」
後半はほぼ悲鳴だ。
何せ、スマートフォンから連鎖して思い出したのは音信不通のまま長らく放っておいた事による身内の鬼の形相だ。
怒らせたら滅茶苦茶怖い育ての親の顔を思い浮かべると条件反射で大きな震えが走る。
「ひ、ひえっ」
慌てて両手で掴み取り、もたつく指で画面に指を滑らそうとした時、部屋の障子がスッと行儀のいい音と共に開いた。
そこに居たのは眼鏡を掛けた男の人で、俺はこの人の事を知っていた。確か名前は……。
「え、緒方さん?」
「おはよう、体調はどお?」
「……元気、です?」
体調はどお?と聞かれても、俺風邪でも引いたっけ?としか出てこない。
そもそもなんで俺ここに居るのかも分かってないのに。
「怠いとか、痛いとかは?」
部屋に入ってきて障子を閉めた緒方さんは一緒に持ってきた盆を布団の横に置いた。
「特にないです、あの……」
緒方さんなら俺の質問に全部答えてくれるかもしれないと口を開きかけると、見計らったかのようにグー、と腹が鳴る。
「あはは、お腹減ったよね。その音が何よりも元気の証拠だ。色々話したいこともあるだろうけど、まず先にご飯にしよ。お粥作って貰ったから食べて」
緒方さんが盆の上にあった土鍋の蓋を取って、茶碗にお粥をよそい差し出してくれたものを両手で受け取る。
一緒に渡されたスプーンで口に運ぶ。一口食べたら次が欲しくなって、あっという間に平らげてしまった。
「凄く美味しい」
「いい食べっぷりだね。おかわりあるから遠慮しないで」
「ありがとうございます」
「どう致しまして。丸一日寝てたかんだからそりゃお腹も空くよ」
おかわりに口をつけるが、緒方さんの言葉にお粥は入ってはいけない方に引っかかった。
「っーげほっごほごほっ」
「ちょ、大丈夫?!ほらお水!」
「ありがとっげほっございま、ごほっ……いやそれより丸一日?!今何曜日ですか?!」
背中を摩ってくれる緒方さんに食い気味に尋ねる。
「日曜日の、えーっと十八時ぐらいかな」
「日曜日の夕方?!」
緒方さんと別れたのは土曜日の夕方だったような。
いや、もしかして日曜日だった? そんな筈はない。
一体全体どうして丸一日時間が経過しているのか。
俺の二十四時間をどこに置いてきてしまったのか。
両手で頭を抱え、必死に緒方さんと別れてからの記憶を手繰り寄せる。
「俺、俺……」
「……とりあえず、ご飯食べよ。んで、後は大人に全部丸投げして構わないから」
「丸投げ、ですか」
「うん。君に起こったことも、君の保護者への対応も、君のこの二日間の事も。全部責任取ってあげる。匠が!」
にこり、と満面の笑顔で緒方さんが自分の胸をポンと叩いて言う。
そこは流れ的に緒方さんじゃないんだ。と心の中で突っ込んでしまう。
言いたい事も聞きたい事も次から次へと出てくるが、俺は緒方さんの言う通りお粥を掬ったスプーンを口に運んだ。
「全部食べちゃっていいからね!また器を下げに来るから食べ終わったらもう一眠りしておきな」
そう言って緒方さんは部屋から出て行った。
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