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高校生活のはじまり①
お久しぶりです。
高校生始まります(*^^*)
一年生はできる限り匠と詩音の距離を縮めていきます。お付き合いよろしくお願いします٩( 'ω' )و
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俺、如月詩音はこの度めでたく高校一年生となった。
山ん中に建てられた、その辺一体に住むガキ全員を一クラスに押し込んだかのような中学校とは違い、高校のクラスは三クラスある。それでも都市部に比べればかなり少ない方だが俺からしてみれば十分多い。
そもそも一クラスだって四十人いるんだ。俺にはその四分の一でさえ名前を覚えられるか怪しい。
俺は人見知りではないが、人間関係は最低限でも問題ないと考える派で波瀾万丈なんていう四文字熟語とは距離を取りたい派だ。
だからといって人間誰とも関わらずに生きていくなんて事できないって事は俺にも分かる。
そんな俺が直面している事件といえば、クラス分けだ。
春休み住む所や生活が変わったせいでスッカリ忘れていた。
悟と時間を合わせて登校して掲示板に張り出されたクラス分け表を見て漸く現実を受け入れる。
ヤバイ。
見事に悟とクラスが分かれてしまったのである。
俺の最低限の人間関係が底地になった瞬間だ。
まさに晴天の霹靂。
掲示板に張り出されたクラス分けを見て俺はどうせ二年生になればまたクラスが変わるから一年間孤独でいようと腹を括った。
ちなに悟は一の一、俺は一の三。
ご丁寧に俺と悟のクラスの間には一の二が挟まれているどころか、下に降りる階段とお手洗いまで間にある。
はっきり言って、遠い。
授業と授業の間に気軽に会話をしに行くのは手間だと感じる距離だ。
「お前部活とかどうすんの?」
俺が思考を放棄していると悟が聞いてきた。
「入るつもりない……」
「だよなぁ。俺は剣道部だけど」
悟は剣道部があるからここの学校に決めたようなものだから、自然な選択だろう。
一応部活は入るも入らないのも自由だ。そして俺は端からどこにも入るつもりはない。でも学校が終わって真っ直ぐ家に帰って勉強っていうのも何か味気ない。
「…………バイトしてみようかなぁ」
俺が口にすると、隣でクラス分け表にスマートフォンを向け写真を撮っていた悟が物凄く嫌そうな顔で俺を睨んだ。
「なんでそう問題を起こしたがるんだ?」
「………………もっと他に言い様ねーの?」
悟の言いたい事はとてもよく分かっているつもりだが、流石に容赦がない。
俺は実家から通うわけでもアパート借りる訳でもなく、詩子ちゃんの金で匠の家に住み着いてるのだから自分で稼げる範囲の出費ぐらいはなんとかしたいと思ってもおかしく無い筈だ。
それに、アルバイトを口にしたぐらいでそんな顔されるなら、就職する時どうしてくれる。今度は「事件でも起こしたいのか?」とでも言われるのだろうか。
冗談じゃねぇ。
そこまで他人を気遣うつもりはない。
っていうかそもそもいつだって俺に非はない。
十対零だ。
「まーなんとかなるだろ。悟だって部活はするけどバイトもするんだろ?」
「まーな。金は貯めとく事に越した事ねーし」
「もう決めた?」
「いやまだ」
「やるとしたらどんなん?」
「んー……、無難にコンビニとかか?飲食店でもいいかなって思うけど部活がない日しか無理だしなぁ」
あわよくば悟と同じところでバイトをしようと思ったが、すぐには決まらなさそうだ。
「それよりお前さ、バイトより目先のこと考えろよ。友達作らないと朝から晩までボッチだぞ。ボッチオン」
「お、おま、今なんてった?!」
ボッチオンってなんだ。まさか、まさかと思うが混ぜたのか。センス悪すぎだろ。
「言われたくなきゃ、せめて一人ぐらいクラスで話せる人間見つけるんだな。まさか俺にお前の友達作り協力しろとは言わねーよな?」
「言わねーよ!!バカ!!!」
…………とは言ったものの、クラスに足を踏み入れた瞬間俺は悟に対して見栄を張った事を少し後悔した。
まだSHRも始まっていないのに教室の中は既に何らかのグループができていたからだ。多分地元の中学が一緒だったり、塾が一緒だったりとかそんなんだろう。
俺の席はどこだろう、と辺りを見渡すとなんとなく視線を感じた。顔を上げれば何人かのクラスメイトと目があって皆同じように俺から目を離す。
まるで見たらいけないものを見たような反応だ。
……俺は珍獣か何かかよ……。
机は出席番号順なので適当に自分の席に目星をつけて机に向かう。
見つけた俺の席はなんと一番後ろから二番目のグラウンドが見える窓際だ。中々俺にとって好ましいと思える場所に腰の下で拳を握る。
俺の苗字は"きさらぎ"だから、俺の前後も"か行"だろう。一体何て名前のやつが座るのか俺は少しだけ楽しみだった。
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