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幕間 肉うどん
昨夜の事件のニュースを見て話の途中だったが、どうしてもお腹が空いて頭が回らず、エヴァンに断ってうどんを用意していた。
つゆをあたためつつ、麺を一人前、器に盛り付ける。
かけつゆがふつふつしはじめ、かつお出汁の香りが部屋中に広がる。
エヴァンは、しばらくはテレビを見てなにか考えていたようだったが、その匂いにつられてキッチンにやってきた。
「うどんたべてみる?」
「う、どん」
なにか得体のしれないものの名前を呼ぶようにエヴァンはぼそりとつぶやく。
そっか、そういえばエヴァンってしっかり外国人なんだよなと、当たり前のことを思う。
瞳の色も肌の色も、その恵まれたスタイルもとても日本人離れしている。
ただ、あまりにも流暢に日本語を話すから忘れてしまっていた。
「食べたことない?」
「あぁ。そもそも食事自体興味が、なくて」
「えぇ!?」
なんとなく予想はしていたけど、本当にそうなんて。
「ぜったい人生の半分は無駄にしてるって!」
大げさに言うと、エヴァンは困ったように薄く微笑む。
「あ、じゃあちょっとだけこれ飲んでみる? 日本食たべたことないなら新鮮かも!」
いいアイデアだって思って、小皿に少しだけよそってエヴァンに差し出すと、彼はやはり困り顔だった。
それでも、鼻先に持っていって香りを確かめ、ゆっくりと口元に運んでくれた。
味わって飲み込む姿に内心わくわくした。
今日のは特別にこだわってはいないけれど、美味しくできたから。
「んー……」
期待を持って見つめる俺に、彼はなんと言ったらいいかわからないらしくしばらく沈黙が続いた。
あ、これ、俺やっちゃった?
無理に飲ませて感想求めちゃって……興味ないって言ってたのに。
「ご、ごめん」
気まずくなって、空になった小皿を受け取り流しに置いた。
「いや」
そんな俺にエヴァンは言葉を選びながらゆっくりと続けた。
「たぶん、おいしいと思う……。血液以外の味を感じるのは、久々で、変な感じだ」
丁寧に言葉にしてくれようとして、それだけで嬉しかった。
そして今度は、肉を少しとうどんを少し、箸は使えないみたいだからスプーンに入れて。
口に運ぶのをドキドキして見守る。
ゆっくり咀嚼しながら、味を確かめるように食べる姿を見つめた。
「おもしろいな」
味はやはりよくわからないようだったけど、舌に感じる、たぶんしょっぱいとか甘いとかそういう刺激がおもしろいらしく。
ちょっとだけ目を輝かせる姿にきゅんと胸が締め付けられた。
あ、そんな顔もするんだって。
流石に全部いきなり食べるのは無理らしくてその一口だけだったけれど。
エヴァンが滞在している間に、もっとおいしいの、食べてもらおう。
そんな密かな目標ができた。
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