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 僅かに浮き足立ちながらエヴァンと帰路についた。  意外と子ども好きなんだねと言うと、自分でも知らなかったとエヴァンは笑った。  帰宅後、蒸し暑い部屋にクーラーをつけ、シャワーを済ませた。  リビングに戻ると、エヴァンはいつも通り本を開いていた。 「エヴァン」  名前を呼ぶと顔を上げ、柔らかな笑みを浮かべる彼と目が合った。  彼の横に座って、火照る身体を誤魔化しながら続けた。 「この間の続き、しよ……? ほら、最後までできなかったでしょ。その……準備したから、だからエヴァンもシャワーしてきてよ」  視線を彷徨わせながらぼそぼそと言う。  するとエヴァンはくすりと笑って俺の頭にキスし、耳元で囁くように言った。 「ベッドで待ってて」  低い声が体の奥に響く。  浴室に向かう彼を見送り、俺は自分の部屋のベッドに腰掛けて彼を待った。  少しして戻ってきたエヴァンは、満足に髪も乾かさないまま腰にタオルを巻いただけ。惜しげもなく晒される引き締まった肉体にドキドキせずにはいられなかった。  今までだって何度も、こういう雰囲気になることはあった。けれど、改めてこんな風に、特別な関係になってから迎える瞬間は別物のように感じる。  横に腰掛ける彼の濡れ髪に触れながらキスをした。 「風邪引いちゃうよ」  ぼそりというと、エヴァンはふっと笑って、俺を押し倒した。 「いい……もう待てない」  首筋に唇を這わせ、Tシャツの中に手が忍び込む。  素肌を優しく撫でられて身を捩った。 「んっ、はぁ……っ」  吐息の漏れ出した唇に彼の唇が重なり塞がれた。遠慮のない貪るような深い口付けにくらくらする。彼の首に手を回して何度も繰り返しキスをした。 「ふぁ……はぁはぁ」  唇が離れ目を開くと熱っぽいエヴァンの瞳と目があう。ぞくっとした。普段は見せないような、欲望を隠さない視線が俺を捉えていた。  心臓がうるさいくらいに高鳴る。  エヴァンの唇がまた首筋をなぞり、そしてたくし上げられた胸元に落とされた。  じれったく胸に触れては離れる、柔らかな唇の感触に夢中になっていると、彼の大きな手が腰を撫でた。  そのまま下着ごとズボンをずり降ろされ、鈍く主張する昂りが外気に晒された。 「んぁ、ふ、……あぁっ」  そこをエヴァンの手が包み込み、緩く握り刺激され、待ち望んでいた感覚に思わず腰が浮いた。  同時に、期待してぷくりと形を示す乳首に彼の舌先が触れて、びくりと身体が跳ねる。  一気に快感が押し寄せ、たまらずに彼の頭に手を添えて悶えた。エヴァンに触れられているところ全てが熱を持ち、身体が熱い。  舌先が敏感なところをくすぐり、否応なしに興奮を高められる。  方や、彼の指先で繰り返し擦られ、与えられる快楽にたらたらと先走りが滲み出した。 「あぁ、んぁ……! んんっ!」  彼の背中に手を滑らせて、強い刺激から逃げるように腰が勝手に揺れ動いた。  その拍子に触れたのか、はらりと緩くなっていたエヴァンの腰のタオルがずり落ちた。  現れた固くいきり立つ彼の姿に息を飲んだ。  首をもたげる屹立にそそられてつい手を伸ばしていた。  そっと彼に触れると、胸の先をねっとりと舐めあげながら上目遣いにエヴァンが俺を見た。色っぽい表情や、仕草の一つ一つにどうしようもなくドキドキさせられる。 「エヴァン、も、我慢できない……」  いざ彼のそそり立つ屹立を前にすると、中途半端に自分で弄った後ろがうずいてしょうがなかった。  俺の言葉を聞き、エヴァンは俺の下着とズボンに手をかけ抜き取った。  膝を立てると彼の手が太ももを撫で尻に触れた。  「ほぐしたから、入れて、だいじょ、ぶ……んぁ!」  思わず上擦った声が漏れた。エヴァンの指が後孔をなぞり滑り込んでくる。ゆっくりと入り口を出入りする指の感覚にぞわぞわと快感が広がった。 「あっ、んんぅ……っ!」  一度引き抜かれ、ローションを足した指先がまた挿し込まれ、内壁を探られる。 「エヴァン……っ」  優しい指使いにたまらず鼻にかかった声が出てしまった。 「も……入れて、お願い。痛くても、平気だから」  困ったようにため息をついて、エヴァンの指が抜き取られた。 「煽るな。俺だって余裕ないんだ……」  エヴァンが低く呟くように言う。  腰を引き寄せられ、入口に当てがわれた屹立の大きさに多少怖気付いたが、気付かないふりをして、力を抜くように呼吸を繰り返した。  擦り付けられていた先端がじわじわと押し込まれ、ゆっくりと押し広げられていく。 「っあぁ、んぅ……っ!」  想像していたよりも大きく、息が詰まる。  自分で慣らしていたとは言え、思っていたよりもすんなりとは入っていかない。  けれど、それよりも高揚感でいっぱいだった。  大好きな人と繋がれる瞬間の喜びで胸がはりさけそうだった。 「……平気か?」  半分ほど入ったところでエヴァンがそう聞く。 「うんっ、はぁ……もっと奥まで、きて?」  今まで経験したことのないような、こじ開けられる感覚にぞくぞくした。  じわりと奥を広げられ、肌が触れ合い、やっと奥まで入ったのがわかる。  こうして繋がれる時を望んでいた。魔力に翻弄されてではなく、ただ求めあって繋がれる瞬間を。  いろんな不安も今は頭から抜けて、ただほっとして頬が緩んだ。  先程の言葉通り余裕なさげなエヴァンと目が合い、手を伸ばして彼の頬に触れた。  こんなにも愛おしい気持ちに包まれるなんて思わなかった。 「エヴァン……」  名前を呼ぶと、覆いかぶさるようにして身を屈められ、深く深く奥まで入り込むくらいに密着する。  彼の湿った髪の毛を押さえて、首に手を回し、何度も口付けをした。  何度と無くキスを繰り返しながら胸がいっぱいになった。 「……エヴァン、動いて?」  そっとそう呟くと、彼は控えめに引き抜いて、ゆっくりと深くまで貫いた。  多少馴染んで敏感になった内壁を抉られて快感が押し寄せた。   切羽詰まっていそうなエヴァンの表情に、優しくしてくれてるのがわかる。 「んっ、あぁっ……もっと好きに、動いていいよ?」 「レオ……」  恨めしそうな視線に思わず笑ってしまう。  不器用で口数も少ないけれど、どこまでも優しい彼にどんどん惹かれていく。  大事にしてくれているのが伝わってきて、思わず顔がニヤけるのを隠すように口元に手をやった。  その手を掴み取られ、ベッドに押さえつけるようにして、また唇を奪われる。 「好きだ、レオ……」  耳元で囁かれて顔が熱くなった。  そのまま動きが激しくなって、抑えられず嬌声が溢れた。  彼の仕草も表情も言葉も全てに心を満たされた。ずっと感じていたもどかしさも気にならなくなるくらい、エヴァンとの触れ合いに、彼に夢中になった。 「あっ……はぁ、んんっ!」  ぎしぎしとベッドが軋み、濡れた音が響く。  シーツをぎゅっと握りしめてただ快楽に身を委ねた。 「エヴァン、あっ、だめ……っ!」  奥を抉られながら、前を握り擦られて、思わず腰が浮いてしまう。 「……痛かったか?」  エヴァンが動きを止め、中途半端な状態で止められたもどかしさに腰をくねらせた。 「ちが、……気持ち良すぎて、その……だめってこと、だから……もっとして?」  くすりと色っぽく笑うエヴァンの表情に釘付けになっていると、また動きが再開された。  押し寄せる快感と、彼の愛撫の高揚感に包まれた。  前と後ろを同時に攻められ、その強い刺激に、ついきつく締め付けてしまう。密着しているせいで、引き抜かれ切なさも、貫かれる快感もより感じられて、どうにかなりそうだった。  堪えようもなく早々に射精感が込み上げてくる。 「エヴァン、あぁ……も、イっちゃう……!」  俺の言葉に応えるように動きが速くなり、身悶えて彼の腕をぎゅっと掴んで堪えるが、それも長くは続かなかった。  全身を突き抜けるような快感に目の前がちかちかする。 「あっ! んぁっ、イく……っ!」  きつく彼を締め付けながら、勢いよく精液が溢れ出し、お互いの腹部を汚していった。  荒く息を吐きながらベッドに身体を預け、脱力した。  恍惚として満足感に浸っていると、腰を掴み直されてゆっくりとエヴァンが再び動き出した。 「えゔぁ、ん……ひぁっ」  ひくひくと締め付ける中をこじ開けるように、欲に突き動かされるように彼が貫いていく。  いつになく熱を持った屹立に刺激され、身悶えながらぎゅっとシーツを握りしめた。 「あぁ、んっ……んぁっ!」   与えられる苦しいくらいの快感と、エヴァンに求められる悦びに震え、胸が詰まる。  中から引き抜いて、エヴァンはそのまま俺の腹部に白濁液を吐き出した。  吐精の余韻と多幸感に浸り、そっと抱き合った。  「大好きだよ」  そう呟くとエヴァンは青い瞳を細めて微笑む。  おもむろに耳元に唇を寄せて「I love you」と囁かれ、心臓が高鳴った。  英語に疎い俺でも流石にその意味ははっきりと知っていて、じわっと胸が熱くなった。  どうしようもなくエヴァンが好きだ。  どんな言葉をあてがえばいいかわからないくらいに。  「もっかいしよ?」  そう呟くとエヴァンは満足そうに笑みを零して、返事の代わりにキスをした。

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