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 外で遊んで、風邪を引かないようにお風呂に入れてとバタバタしながら、あっという間に午前中は過ぎていった。  お昼はそうめんを湯がいて軽く済ませた。  どうせなら流しそうめんなんかしたらもっと楽しかったかなと思いを馳せつつも、会うたびに落ち着いて食事出来るようになっている正樹の成長ぶりをつい微笑ましく思ってしまう。  楽しく遊んで食べて、疲れたのか目を擦り眠そうな正樹。 「お昼寝する?」 「ううん、ねむくない……」  念の為に干していた布団をリビングに持ってきて、寝ぼけ眼の正樹を寝かせた。 「まだ、あそぶ」 「じゃあほら絵本読もう、エヴァンおにいちゃんが読んでくれるって」  正樹と一緒に横になって、エヴァンが本を読むのを聞いた。  落ち着いた穏やかな声の彼が本を読むのを聞きながら、俺まで眠くなってくる。  数ページ読んだところで正樹が寝息をたて始め、そっとタオルケットを掛け直して俺とエヴァンは布団を離れた。  そのままにしていた昼ご飯の食器を片付けて、残り物を冷蔵庫にしまう。洗い物もしてしまおうと流しに立つと、エヴァンも横に来て食器を拭いてくれた。  幼稚園のお迎えや、実家に戻った時に面倒を見ることはあったけれど、やはり子どもがいるとかなり気を遣ってどっと疲れが来る。 「エヴァンごめんね、ずっと面倒見てもらって」 「なんで謝る」 「子どもの相手って疲れるでしょ?」 「気は遣うが、楽しいよ」 「そう? エヴァンがこんなにも子ども好きなんて、ね」 「なんだよ」 「ううん」  子ども慣れしていないエヴァンのことだから俺以上に気を張っていたかもしれないのに、嫌な顔をせずに手伝ってくれた。改めて大好きだなぁと、思わずにやけてしまう。  一人で笑っていると、隣に立つエヴァンが肩を寄せて微笑んだ。 「今日は上機嫌だな」  上機嫌。まさにその通りだ。 「大好きな弟とだーいすきなエヴァンおにいちゃんと一緒にいるからかな」  エヴァンを見上げて笑いかけると、彼は満足そうに頬を緩める。  腰に手を回して抱き寄せられ、そっと身体を預けた。  これ以上無いくらい穏やかな日のように感じる。こんな何気ない日常に、隣にエヴァンがいてくれる幸せを噛み締めた。  頬に彼の指先が触れ、顎を持ち上げられ、顔が近づく。  目を閉じると柔らかな感触を唇に感じる。  ゆっくりと目を開けるとエヴァンの青い瞳がまっすぐと俺を映していた。  庭の木々が風にさざめき、蝉の声が耳に入る。  穏やかに過ぎていく時間の愛おしさに胸がいっぱいだった。 

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