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冷たい眼【1】
「え?君が探していたのって海輝君の事だったの?」
「別に探していません」
「弟さん?」
「詮索をしないでいただきたい」
「えー?海輝弟いたっけ?」
「俺は弟じゃない」
「名前教えてくれたらうちらも直ぐ分かったのに~海輝とは友達だしぃ」「友達だって」クスクスと漏れる笑い声。
「え~彼女じゃなくって?」
その言葉に錦の機嫌が急降下したようだ。仏頂面が険しくなる。
その子の機嫌を損ねるなら、僕のいない所でしてくれと海輝は声なき懇願をする。一度へそを曲げると、頑固なだけに中々面倒なのだ。
「人が歩いていたら勝手に囲んできた癖に恩着せがましい女だな。俺は構うなと何度も言ったぞ。4人もいて誰一人理解力が無いのか?嘆かわしい」
「やだぁ、この子可愛い」
「最近の女は何を見ても同じことしか言えないのか。語彙は貧しすぎるな。アレの友人だと言うなら少しは見習え」
敬語の使用をやめた錦がアレと言い海輝を顎でしゃくる。育ちは良いはずなのに、何とも口と態度が悪い。昔はもう少し可愛げがあった気がする。
「アレというのは僕の事?」
隣で唖然とした顔を見せる友人に問いかけるが、返事は無い。
「女、どけ」
「女、どけ、だってええ」「あははは。かっこいー」「面白い子だね」
自分よりも年上の女たちを冷やかに見上げる視線は、完全に侮蔑の意を帯びていた。
そんな視線にも怯むことなく逆に「可愛い」などとはしゃぐものだから、錦の機嫌は下降するばかりだ。空気の読めない女は怖いもの知らずだなと感心してしまう。彼女たちの好奇に満ちた視線が海輝に向けられた。海輝は視線を泳がせる。さて、どうしたものか。
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