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天邪鬼な猫【1】
「君がそこまで僕のこと好きだとは」
「勘違いするな。俺はお前が嫌いだ」
「でしょうねぇ」
姦しい女たちと、昼食を約束していた友人と別れ二人は並んで歩いていた。
見下ろす錦の横顔に、感情は浮かんでいない。
「いやぁ、それならさぁ。これ運命なのかなぁ。こぉんな、くっそ広いキャンパスエリア内で会うなんて。しかも君は中学生で僕は大学生。建物の敷地自体も違うし、目的を持ち相手を探さないと会えないような条件じゃないかい?それが偶然。はははは」
なにが、偶々だ。
なにが、お前に用はない、だ。
大学と彼のいる中等科は全く別の敷地じゃないか。
それを、偶々歩いていたらだと?
笑わせる。僕を探していたんだろう?
正直問い詰める程の関心は無く、彼の幼い望みを叶えてやるほど優しくはない。
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