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第50話

××× 一体、どういうつもりなんだろう。 僕が嫌いなら、ハッキリそう言えばいいのに。こんな……味方みたいなふりをして、裏で子供染みた嫌がらせを繰り返すような、まどろっこしい事なんかしてないで。 お前の望み通り、僕は既に孤立状態なんだから、それでいいじゃないか。学級委員長でもないのに、こんな僕を気に掛ける振りなんかしなくても、誰もお前の評価を下げたりなんかしない。寧ろ、しつこく関わる方がリスクがあるんじゃないか? 結局、午後の授業を待たず早退する事に。誰がアゲハに連絡したかは解らないけど、恐らく染矢先生だろう。先生もアゲハのファンみたいだから……保険医に会話のチャンスなんて与えたりしない気がする。 校門を抜け、学生のいない静かな街並みに足を踏み入れる。少しの背徳感。だけど、胸のつかえが取れたように息がし易い。 ……自由、なのかな。 立ち止まって空を見上げれば、太陽を隠すように灰色の雲が蔓延っていた。 「工藤!」 突然呼び止められ、心臓が大きく跳ねる。 「一緒に帰ろう!」 振り返れば、そこにいたのは──清井。 追い掛けて来たんだろう。僅かに息を乱している。 「実は僕も、今日は早退組なんだ」 「……」 どうして…… 何でここまで関わってくるんだ。 やっと気持ちが落ち着けたというのに。自由になれたのに。 何でいつもズカズカと、僕のパーソナルスペースに土足で踏み込むんだ。 「体調はどう? 少しは食べられた?」 僕と肩を並べると、教室にいる時と変わらない笑顔で話し掛けてくる。無害そうな雰囲気を醸し出しているけど、僕は簡単に騙されたりしない。 コイツは──何処となく屋久に似ている。 「工藤って、普段から余り食べないよね。ただでさえ痩せてるのに……これ以上痩せたら、ポキって簡単に折れちゃいそうだよ」 「……」 「あ、……もしかして、給食が苦手だったりする? 家ではちゃんと食べる派とか」 「……」 どうでもいい話を、一方的にしてくる。僕が聞いていようがいまいが関係なく。嫌な気分だけど、いちいち反応してたら清井の思う壺だ。 「……あのさ、工藤」 大通りに差し掛かると、清井の声色が変わる。それまでの嘘臭い爽やかな声とは違い、真面目なトーン。 「ちょっと話したい事があるんだ」 「……え」 散々話しておいて、他に何を話すと言うんだろう。清井の足が止まり、釣られて僕も立ち止まる。 「学校では言えなかったんだけど、実は僕も──」 「……それ、おじさんにも詳しく聞かせてくれないかな」 電柱の影からヌッと現れたのは──ハンチング帽を目深に被った、妖しげな中年男性。

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