52 / 53
第52話
「答えた所で、きっと貴方には理解できないと思いますよ」
「──さぁ。それは、君の答え方次第なんじゃないかな」
清井の突っぱねた台詞に被せ、ジャーナリストが文字通り更に詰め寄る。
「なら、貴方に理解できるように話したら……事実をそのまま記事にしてくれるんですよね」
それを迎え撃つかの如く、清井が言葉で返す。
……すごい。
僕だったら、逃げるか我慢して無視する位しか出来ないのに。
性格の違いか。培ってきたものの違いか。僕にはよくわからないけど……
清井の陰に隠れながら、じっと男の様子を窺う。
「そのつもりだよ」
スッと清井の前に出されたのは、男の名刺。
──『フリージャーナリスト 鏡味 潤』
「週刊uso!は知ってるかな。
超常現象や都市伝説を取り扱う雑誌だが、その中には真実が隠されてると噂されている。事実、他社ではしがらみによる圧力が掛かる内容でも、週刊uso!なら検閲無しで世に出せるんだよ」
「……」
「私は、その週刊uso!の元社員だ」
フリージャーナリスト──鏡味の告白を受けた清井が、彼を見据えながら片手を伸ばし、名刺を受け取る。
「……わかった。仕事が終わったら連絡します。でも、貴方が思っているような答えではないと思いますよ」
「構いません。……私はただ、真実を知りたいだけなので」
そう言って男がハンチング帽のツバを掴んで下げる。
「では、お待ちしてますよ。清井奏仁くん」
アッサリと引き下がる鏡味。その背中を見送ると、全身から力が抜け落ちていく。
「……」
男が背を向ける一瞬、ツバの下に隠れた眼が、僕を捉えたように見えた。
逃しはしない──そう警告したかったんだろう。
「大丈夫か?」
振り向いた清井が、心配そうに覗き込む。その顔は僕と違ってしゃんとしていて。改めて清井の強さを感じた。
「……うん」
暫く、並んで大通りを歩く。
『学校では言えなかったんだけど、実は僕も──』──鏡味が現れる前、清井は僕に何を伝えたかったんだろう。
もしかして、樫井秀孝事件の被害者だって……言いたかったのかな。
清井の横顔を盗み見ると、視線に気付いた清井の眼が此方に向かれる。視線がぶつかった瞬間、我に返ったんだろう。険しい顔付きから、いつもの柔らかな表情に戻る。
ともだちにシェアしよう!

