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第52話

「答えた所で、きっと貴方には理解できないと思いますよ」 「──さぁ。それは、君の答え方次第なんじゃないかな」 清井の突っぱねた台詞に被せ、ジャーナリストが文字通り更に詰め寄る。 「なら、貴方に理解できるように話したら……事実をそのまま記事にしてくれるんですよね」 それを迎え撃つかの如く、清井が言葉で返す。 ……すごい。 僕だったら、逃げるか我慢して無視する位しか出来ないのに。 性格の違いか。培ってきたものの違いか。僕にはよくわからないけど…… 清井の陰に隠れながら、じっと男の様子を窺う。 「そのつもりだよ」 スッと清井の前に出されたのは、男の名刺。 ──『フリージャーナリスト 鏡味 潤』 「週刊uso!は知ってるかな。 超常現象や都市伝説を取り扱う雑誌だが、その中には真実が隠されてると噂されている。事実、他社ではしがらみによる圧力が掛かる内容でも、週刊uso!なら検閲無しで世に出せるんだよ」 「……」 「私は、その週刊uso!の元社員だ」 フリージャーナリスト──鏡味の告白を受けた清井が、彼を見据えながら片手を伸ばし、名刺を受け取る。 「……わかった。仕事が終わったら連絡します。でも、貴方が思っているような答えではないと思いますよ」 「構いません。……私はただ、真実を知りたいだけなので」 そう言って男がハンチング帽のツバを掴んで下げる。 「では、お待ちしてますよ。清井奏仁くん」 アッサリと引き下がる鏡味。その背中を見送ると、全身から力が抜け落ちていく。 「……」 男が背を向ける一瞬、ツバの下に隠れた眼が、僕を捉えたように見えた。 逃しはしない──そう警告したかったんだろう。 「大丈夫か?」 振り向いた清井が、心配そうに覗き込む。その顔は僕と違ってしゃんとしていて。改めて清井の強さを感じた。 「……うん」 暫く、並んで大通りを歩く。 『学校では言えなかったんだけど、実は僕も──』──鏡味が現れる前、清井は僕に何を伝えたかったんだろう。 もしかして、樫井秀孝事件の被害者だって……言いたかったのかな。 清井の横顔を盗み見ると、視線に気付いた清井の眼が此方に向かれる。視線がぶつかった瞬間、我に返ったんだろう。険しい顔付きから、いつもの柔らかな表情に戻る。

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