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第45話

───え…… 心臓が、止まるかと思った。 授業中の筈の先生が、なんでここに── 「……はい」 小さく唇を動かして答えると、先生の黒眼が僅かに動く。僕の瞳から唇、首元へとなぞるように。 「ここの所、ずっと休んでいるが……何処か悪いのか?」 「……」 「それとも──誰かに何か、嫌がらせでもされてるのか?」 瞬きもせず、食い入るように一点を見つめる双眸。 遠慮がちに尋ねてはいるものの、何処か思い詰めたような色を含んでいて──思わず掛け布団の端を掴み、顎先が隠れる程に引き上げる。 「……べつに」 「ちゃんと答えてくれ!」 バサッ── 勢いよく、その掛け布団を引っ剥がされる。と同時に温もりを奪われ、身体がぶるっと震えた。 「工藤の為なら、なんだってする。何だって、だ。……だからっ、先生にだけはちゃんと話してくれ」 「──!」 伸ばされる手。軋むベッド。食い込むほどに押さえ付けられる両肩。まだ冬だというのに、先生の手のひらが酷く汗ばんでいる。 間近で覗き込む、鬼気迫った表情。血走った両眼。劣情を孕み、取って食われてしまうんじゃないかという恐怖が襲う。 ハァ、ハァ、ハァ…… 鼻先に掛かる、生温かな吐息。中年男性特有の、喉に異物が詰まるような脂臭いにおい。荒々しい息遣いが容赦なく僕の鼓膜を汚し、全身に虫唾が走る。 いやだ…… アゲハとは全然違う。こんなヤツの言いなりになんか、なりたくない。 僕の全てを、暴かれたくなんか── ──ホントに? ふと、脳裏に走る声。 キーンという細くて鋭い不快音が、脳天を突き抜けていく。 ──ふふ。コイツを調教したいって思ったコト、あるでしょ? そんな、こと…… ──僕と、交代してよ。そしたら上手く、操ってあげるからさぁ…… 「ぃ……ゃだっ、!」 振り払うようにして声を出せば、目を大きく見開いた先生がパッと手を離す。

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