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第22話
キーン…
突然──鼓膜付近で響く、不快な耳鳴り。
それは聴力検査で聞いた事のある、細くて高い小さな音によく似ていて。脳幹を鋭利な金属で劈くような痛みも伴い、思わず耳を塞ぐ。
……ふ、ふふっ、
音に引っ張られるようにして現れる……心の奥底にある──『何か』。
可笑しさまで込み上げ、肩が大きく揺れる。
切羽詰まった顔で、僕の所に駆け寄ってくる棚村に、ふふ……あんなに取り繕った笑顔なんか向けちゃって。
そんなの、無駄なのに。
変態棚村が夢中なのは──この僕。
好感度命のお前じゃない。
だって、見たでしょ。
棚村が僕を見る……あの卑しくて、物欲しそうな眼──
「──!」
耳鳴りと共に消える、頭の中の声。
僅かに残る、奇妙な高揚感。
……なに、これ……
突然迫り上がる、恐怖と不安。
痺れる脳内。震える指先。
知ってる……この感覚。
若葉が乗り移ったような、あの奇妙な感覚だ……
「……」
吐き気がして、背中を更に丸める。
棚村先生をどうにかしたいというおかしな感覚が、まだ僕の中に……微かに残っている。
お尻を叩いたり。密着して腰を抱いたり。
距離感が明らかにおかしい先生なのに。
……なんで……
なんで、そんな奴を……
はぁ、はぁ、はぁ……
……嫌だ……
あんな思いは、もう……したくない……
強く目を瞑り、息を止め、その奇妙な感覚を逃そうとする。
はぁ、はぁ、はぁ……
この静寂した、保健室のベッドの中で。
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