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第66話 友達

××× 授業が終わり、席を立つ。 騒がしい教室内。ロッカーから体操着袋を取り出す男子達を尻目に、僕は廊下に出た。 昨日の補習であんな光景を目にしてから、食事が喉を通らなくて。口の中に残る感触が……気持ち悪い。 そんな僕を、アゲハは心配してくれていたけど。 「……」 はぁ、と溜息を漏らす。 まともに食べていないからか、軽く目眩がする。頭の奥が痺れて、手の指先に力が入らない。 ちゃんと話した方がいいのは解ってる。けど……話したくない。 もし頼ったら、今度はキスだけじゃ済まなくなりそうで。 出口のない思考。 息苦しい空気。 ぐらぐらする頭を抱えながら階段を下り、保健室へと向かう。 と…… 「工藤」 廊下の向こうから現れた、ガタイの良い──棚村先生。 瞬間、ビクッと身体が震える。 「……お前、体操服を盗まれたそうだな」 待ち伏せ、していたんだろうか。 目をギラつかせ、紅潮した頬を歪ませ、切羽詰まったような荒い呼吸を繰り返しながら大股で近付く。 「授業を休む本当の理由は、そのせいじゃないのか?」 「──!」 逃げる間もなく飛びつかれ、両肩を掴まれる。 硬直する身体。その太い指が、骨を軋ませる程に食い込んで……痛い。 「どうして言わなかったんだ! お前の為なら、何だってしてやると言っただろう?!」 凝視する二つの眼。僕の身体を乱暴に引き寄せながら、興奮した顔でグッと迫る。 密着する胸と胸。振り払おうにも、腕力のある体育教師に敵うはずなんてなくて。それでも逃げようと、半歩後ろに下がれば、それを許すまいと力尽くで抱き締められ、首筋に先生の鼻先が寄せられる。 スゥー、はァァー…… 匂いを堪能するかのように、大きく息を吸い込まれ──熱を奪われたその柔肌に、恍惚とした熱い吐息が掛けられる。 ぞくぞくと震えながら首を竦めれば、それに興奮したのだろう。腰を押し付けながら、吐息混じりに僕の耳朶を柔く食む。 「もし、誰かに虐められているなら──」 「……何してるんですか、先生」 背後から聞こえる、冷めた声。 その瞬間──鼻先を僕の首筋に寄せていた先生が、弾かれたように僕から離れる。 「もうすぐ授業、ですよね?」 怖ず怖ずと振り返れば、そこにいたのは──体操服姿の清井。

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