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第75話

一方で。 僕だけを見てくれる人達の中には、僕をどうにかしたいと思っているおかしな人や、利用しようとする悪意を持つ人、性的なものを含んだ恋愛感情を持つ人もいて。僕はいつも、お姫さま扱いされてきた。 だけど……清井は違う。 僕を一人の男として、クラスの友達として見てくれてる。 いつ裏切られるか、いつ襲われるか解らない不安を抱えながら接さなくてもいい相手。 対等な関係。 竜一と離れ離れになって、嫌な目にばかり遭ってきたけど……やっと僕にも居場所のようなものができた。 竜一が望むような学校生活を送れるようになって、良かったなって思う。 このまま何事もなく一年が過ぎれば、きっと今より自由になれる。 竜一と、また自由に会える日が来る。 ああ……早く来ないかな。 竜一と一緒に暮らせる未来が。 そしたら、今日の事を話そう。こんな僕にも、一緒に勉強する友達ができたんだよって。 そしたら竜一、どんな顔をするかな。 『ソイツは、大丈夫なのか?』『また変な奴じゃないだろうな』とか言って、呆れた声で不貞腐れた顔をしたりして。 クラブサンドのひとつを取り、三角の角を少しだけ口に含む。 「……おいしい」 最近、まともに食べれなかったのが嘘のよう。 美味しい。先程よりも大きく頬張ると、その様子を見ていた清井がクスッと笑う。 「さっきまで、何考えてたの?」 「……え」 「何だか嬉しそうな顔をしてたから」 好奇心を宿した清井の瞳が、覗き込むように僕を下から見つめる。 「え、えと……」 「もしかして、好きな子のことを考えてたとか?」 探るような視線でつつかれ、気恥ずかしさから頬が熱くなっていく。 「……うん」 その高揚が、少しだけ心地良い。 清井と恋バナをするなんて、思わなかったから。 「え、誰だれ?」 「だれ、っていうか……年上の、恋人──」 「……えっ、工藤、恋人いるの?!」 清井の瞼が大きく持ち上がり、信じられないという顔付きで僕をじっと見る。 「うん」 「年上って……まさか、黒咲(アゲハ)さんの知り合い?」 「……う、うん」 まさか、ここまで食いつかれるとは思わなかった。 竜一のことを話したい気持ちと、隠しておきたい気持ちがせめぎ合う中、戸惑いながら頷く。 「付き合ったキッカケって、なに?」 ……え…… 真っ直ぐ向けられる目が、瞬きもせず僕を捉える。 『愛してる』──初めて竜一にそう言われたのは、遼の一件があった後。 だけど、それがお付き合いの始まりだったのかはよく解らない。 ただひとつ、言えるとしたら── 「……身体の関係、からかな」 ぽそりとそう漏らした瞬間、清井の表情が強張ったのが解った。

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