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第81話
外観からは想像できない程、お洒落な内装──ウッド調に観葉植物、暖色系のライトが融合し、良い雰囲気を醸し出している。
珈琲の香ばしい匂いの混じった温い空気に、冷たく悴んだ指先や頬がじんと痺れて温かくなる。
「此方にどうぞ」
通されたのは、窓際のボックス席。確かにこの場所からなら、さっきまでいた公園が見える。
「よく見えるでしょ」
「……」
「もし待ち合わせてる人が来たら、遠慮せず行っていいからね」
椅子に腰を掛けると、元々細い眼を更に細めそう言ってくれる。
「……」
そうだ。勘違いさせたままだった。
違うと伝えるチャンスならあった筈なのに、今更違うといった所で困らせるだけのような気がする。
「珈琲淹れてくるから、待ってて」
「……え」
「一杯サービスするよ」
親しげな表情を浮かべた店員が、僕の返事も待たずカウンター奥へと消えていく。
狭い店内には、数人の客。
カウンター席に二人。隣のテーブル席に一人。
横にいるサラリーマン風の男性は、開いたノートパソコンの画面を凝視しながらキーボードを叩き、時々マウスを転がしている。カウンター席では、ロングヘアの女性と席を一つ空けて隣に座る男性が、店員と談笑し始めていた。
微かに聞こえる店内ミュージック。
時折響く、食器のぶつかる小さな音。
「……」
今、何時だろう……
親切に声を掛けられ、温かい場所を提供されたというのに……場違いな感じがして居心地が悪い。もう少しだけここにいた方がいいのかもしれないけど、どのタイミングで店を出ていけばいいのかも解らない。
せめて、本当に待ち人がいたら良かったのに。
ふと思い出されたのは、笑顔を浮かべる清井。
昼間は本当に楽しくて。遠い世界に感じていた平穏な日常を──普通を、初めて感じたと思っていたのに。
清井が傍にいないだけでガラガラと崩れ落ち、また薄い膜を隔てた世界にいるような感覚に戻ってしまう。
一人では、何にもできない僕。
無力で頼りない僕。
もし清井だったら、こんな時どう振る舞うんだろう。
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