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第5話

××× 「……では、目を開けて」 パチン、 指を弾く音がしたと同時に、瞼が自然と持ち上がる。 途端に開ける視界。 その中に、黒縁眼鏡を掛けた白髪交じりの精神科医とアゲハの顔が映る。 「だいぶ安定してきているようだ。今の薬で、もう少し様子をみてみよう」 「……わかりました」 ぼんやりする僕の顔を覗き込んでいた医師がそう告げれば、余所行きの顔をしたアゲハがそう答える。 「静流、後は頼む」 席を外した医師とアゲハの二人と入れ替わるようにして、ウエーブ掛かった長い黒髪を後ろに束ねた男が僕の脇に座る。 「気分はどう?」 「……」 「大丈夫、かな?」 目尻の皺まで蓄えるほど、柔和な笑みを浮かべた若い医師──静流先生が、穏やかな声で話し掛ける。 「起き上がれそう?」 白衣を着ている辺り、同じ精神科医の助手か何かなんだろう。 クッションを頭の後ろに置いただけの二人掛けソファに横になっていた僕は、こくんと頷いたあと上体を起こす。 「今日は、ミントティーを持ってきたんだ。気分がリフレッシュして、頭もスッキリする筈だよ」 コポコポコポ…… 取っ手付きの水筒の蓋を開け、そこにハーブティーを注ぐ。 辺りに漂う微かなミントの香りが、僕の鼻腔を擽る。 「少し、飲んでみて」 差し出されたそれを、ぼんやりしながら両手で受け取る。 「……」 ただのハーブティー。 なのに、これにも何か混ざっているような気がして…… 「別に、無理強いするつもりはないんだ」 「……」 「僕を信用できないなら、これは飲まなくていい。 ……これまで危ない目に遭ってきたんだから、警戒して当然だよ」 そっと、僕の手からハーブティーを取り上げる。 「……」 危ない目? そんな事、あったっけ…… 思考を巡らせようとすると、脳が感電するかのような痛みと衝撃が走る。 ぽっかりと空いた真っ黒い闇── その中に飛び込む勇気はないけど。 まるで、パズルのピースがひとつずつ外れて消えてしまったかのような、嫌な感じ。 「……先生」 怖い…… 僕に何をしたの? 「まだ、僕は……外に出られませんか?」 声が、震える。 苦しくない筈なのに、呼吸がうまく出来なくて。 こんな姿を見せたら……ダメだって言われちゃうかもしれないのに…… 「近くを散歩する程度なら、僕が許可するよ」 「……え」 「但し、アゲハくんと一緒というのが条件だ」 「……」 アゲハと、一緒……

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