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第10話
「……っ、!」
まるで水中に引きずり込まれたかのように、足先から沈んでいく感覚。
突然音が籠もり、辺りが鈍く聞こえる。
胸が圧迫されたみたいに、息苦しくて。肺の中にある空気が押し出され、泡玉が揺れながら上っていく。
……と。
そこは、僕の部屋だった。
まだ心臓が、バクバクしてる。
病室、モル、監視人……妙にリアルな夢……
……ゆめ?
「……」
違う。
夢なんかじゃない。
モルが二度目のお見舞いに来てくれたことなら、ちゃんと覚えてる。
『もう、驚いたッスよ! 蕾の面会に来たら、姫の姿が見えたんッスから』──笑顔を僕に見せてくれたモルは、確かにそう言っていた。
なのに、なんで……
「……」
……怖い。
冷たい陰の部分を探るのは。
まるで金属の刃先に触れるかのようで……未知なる恐怖に、ぶるっと背筋が震える。
『……姫、落ち着いて聞いて下さいッス』
あの時モルは、確かに蕾の話をしていた。
だけど……冷静になって思い返してみると、発する言葉と唇の動きが随分と違っている事に気付く。
『ここは、前とは違う病院ッス』
『恐らく……盗聴器やカメラが仕掛けられてると思うッス』
『……でも、大丈夫ッスよ。必ず助けにきますから』
僅か五分程度の面会。
病室のドアに立って此方を見ていたのは──診察に来る精神科医。
それと……もう一人。
「……」
誰だろう……わからない。
静流先生?
……にしては、背が低いような気がする。
まさか……アゲハ?
脳裏に焼き付いている筈の映像に目を凝らしてみるものの、ピントがぼやけていてよく見えない。
「……」
入院中、よくお見舞いに来てくれたのはアゲハだ。
母は、一度も姿を見せなかった。
退院する時、僕に付き添ってくれた人は……恐らくアゲハ一人。
だとしたら……僕が転院したかどうか位は知ってる筈。
『信用、しないで下さいッス』──夢の中で警告を発したモルの声が、脳裏に響く。
もし何かを知っていたとして、それを隠しているんだとしたら……
アゲハに聞いたらいけないような気がする。
だけど……これからどうしたらいいんだろう。
『大丈夫ッス。必ず助けにきますから』
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