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第13話
×××
久し振りの外出。
ダウンジャケットを羽織り、アゲハが用意してくれた新品の紐靴を履く。
緊張のせいか、指先が少しだけ悴む。
アゲハが玄関ドアを開けた途端、その隙間から強い風が吹き込む。髪が酷く搔き乱され、剥き出しの肌から一瞬で熱が奪われてしまった。
「……ぷはっ」
座ったまま動けずにいる僕に、振り返ったアゲハが吹き出す。
ドアを閉め目の前にしゃがむと、両手で僕の横髪に触れ、優しく手櫛で整えてくれる。
「うん、可愛い」
両手で包まれる頬。
細められた、甘く潤んだ綺麗な瞳。
冷たい風に奪われてしまった熱が、アゲハの手のひらから熱いほどに伝わってくる。
「……」
恥ずかしくて目を伏せる。と、アゲハの手が、そっと離れていく。
まだ頬に残る熱。縋るようにしてアゲハを見れば、自身のマフラーを外し、僕の首にふわりと巻き付ける。
「それじゃ、行こうか」
「……」
何で……
先程まであった緊張が、不思議と解れている事に気付く。
それに……心の奥が、ほわりと温かい。
エレベーターを下り、エントランスを抜ける。
平日早朝の裏通り。天候のせいもあって、殆ど人がいない。
空を見れば、煙突から出た煙のような雲が、形を変えながらあっという間に流れていく。
「寒くない?」
「……うん」
「辛くなったら、すぐに言うんだよ」
変装など一切せず、眩いほどの芸能人オーラを放つアゲハが僕に微笑む。
「……ん」
いつもと違うアゲハに、少しだけ心が揺れ動いてしまう。
こんなの、おかしいのに。アゲハを王子様だと騒ぐ人達の気持ちが、少しだけ解ったような気がする。
「……」
それにしても、寒い。
外に出てから何分も経っていないのに、もう芯まで冷え切ってる。
ずっと温室にいたせいだろう。寒さに身体がついていけていない。
はぁ……
アゲハの隣を歩きながら、擦り合わせた手を広げて息を吐く。
「貸して」
不意に取られた手。
その手が、爽やかな笑顔を浮かべるアゲハのポケットに入れられる。
「少しは、あったかいでしょ?」
「……!」
指先に触れたのは、使い捨てカイロ。
指を絡ませ繋がれた手のひらからは、適度な湿気が伴い……指先がじんと痺れながら熱くなっていく。
こんな風に、アゲハと手を繫いだことなんてあっただろうか。
そもそもアゲハは、僕にスキンシップなんてしたことがあっただろうか。
「風が冷たいし、この辺りを少し回ったら帰ろうか」
「……」
守られてる……?
まさか。
そんなこと、ある筈ない……
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