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第14話
マンションの裏にある公園に着く。
ほとんどが芝生のそこは小さなブランコと砂場しかなく、砂地の上にバスケットボールのゴールがひとつあるだけだった。
「……はい」
ベンチに座っていると、近くの自販機で買ったホットミルクティーを手渡される。
「あり、がと……」
受け取ったペットボトルで両手を温めていると、その様子をアゲハがじっと見つめていた。
「少しは、気分転換になった?」
「……うん」
食後に飲んだ薬が効いてきて、ぼんやりしてしまうけど……冷たい風に当たってるせいか、いつもより眠気が少し飛んでる。
「もう少し天気が良ければ、またさくらと一緒に散歩したいな」
そう言いながらアゲハが隣に腰を掛ける。
「うん」
空を見れば、相変わらず低い雲が凄いスピードで駆け抜けていく。紅茶に入れた角砂糖のように端から形が崩れ、小さくなって……その先は、どうなってしまうんだろう。
風の一部に成り代わってしまうのか。
それとも……消えて……
「そろそろ、帰ろうか」
突然の声にハッとし、僕を見つめるアゲハに視線を向ける。
「……うん」
たった数十分。
だけど……いい気分転換になった気がする。
こうして外の空気を吸い、この世界に僕も生きているんだと実感できて……良かった。
太陽が上り、陽射しが暖かくなってきたからだろうか。犬を連れた人達が公園の一端に集まり、何やら楽しそうにお喋りをしている。
その集団のすぐ後ろを通ると、数人振り返ったのが解った。
「……えっ、今の」
「やだっ、絶対そうよね!」
「あの、ほら……元カリスマホストって言われてる、俳優の……ほらっ」
「なにいってんのよ! 黒アゲハくんじゃない!」
きゃあきゃあと燥ぐ、女性達の声。
アゲハの様子を盗み見れば、何も聞こえてなどいなかったかのように颯爽と歩いていた。
……やっぱり、人気なんだな。
思い出されたのは、小学生になったばかりの頃──
アゲハと一緒に登校し、初めて広い世界での立ち位置を知った。
『キャア、王子ぃ!』
『カッコイイ~!』
『えー、可愛いじゃん』
学校の門へと近付くにつれ、アゲハ自身から放たれる眩い程のオーラ。
その陰に、コソコソと隠れるだけの僕。
『……誰、あの子』
『弟くん?』
『えぇ、全然似てない……』
周囲がアゲハに羨望の眼差しを注ぐ一方で、僕は疎ましい視線ばかりを向けられた。
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