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第15話
──怖い。
視線が、怖い。
ふと脳裏を過ったのは──おばあちゃんのお葬式。
訝しげな目で僕を見る、集まった親戚達。その視線に耐えかね俯けば、隣に立つアゲハの手が──
「大丈夫だよ、さくら。お兄ちゃんがついてるから」
「……!」
振り返ったアゲハが、強張る僕に穏やかな笑みを浮かべてみせる。そして冷え始めた僕の手を拾うと、しっかりと握り締めた。
『……あの子が、例の』
『随分と冷めた子ね』
『まあ、なんて卑しい……』
──あの時も、そうだった。
世界中の誰もが僕を蔑んでも、アゲハだけは違っていた。
守られてる……そう思った。
学校でもアゲハは、僕を守ってくれた。
「……」
だからこそ、信じたい。
この手を。
いま頼れるのは、お兄ちゃんしかいないのだから。
公園の周りを歩きながらマンションへと戻る。
表からひとつ入った所にあるそれは、周囲の建物よりも高くて。形の整った植え込みに鉄製の柵、中世のヨーロッパを彷彿とさせる大きな門が、更に高級感を与えている。
こうして外から見ると、こんな立派な所に住んでいるんだ、と改めて実感する。
「疲れてない?」
キュッと握られる手。
温かくて、頼りがいのある手。
「……うん」
アゲハが一緒だったから……
そう言いたかったけど、恥ずかしくて。握られた手を少しだけ握り返す。
門をくぐり、ガラス戸の前に辿り着く。
部屋番号を入れ、自動ドアが開いた瞬間──
「───アゲハッ!!」
ドンッ
背後から迫る人影に、振り返る間もなく突き飛ばされる。
枯れ葉のように軽い身体は簡単に吹き飛ばされ、大理石のような壁に肩から激突し、頭を強く打つ。
「汚い手で触るなっ!」
ズリズリと壁を伝って崩れ落ちる身体。鈍い痛み。動けずにいる僕に、ヒステリックな女性の怒号が飛ぶ。
「今後一切、アゲハに関わるなっ。……この、疫病神ぃ!!」
痛みに堪えながら瞼を持ち上げれば、僕を差す指先がぼんやりと見えた。
グラグラと揺れる脳内。
瞬きをして、僅かにクリアになった視界でもう一度女性を捉える。
「……死ね!」
敵意の籠もった、鋭い声。
向けられていたのは、指ではなくナイフの刃先。
一瞬で頭が冴え、大きく目を見開けば──
「……え」
そこにいたのは、随分と年老いた──母。
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