15 / 24

第15話

──怖い。 視線が、怖い。 ふと脳裏を過ったのは──おばあちゃんのお葬式。 訝しげな目で僕を見る、集まった親戚達。その視線に耐えかね俯けば、隣に立つアゲハの手が── 「大丈夫だよ、さくら。お兄ちゃんがついてるから」 「……!」 振り返ったアゲハが、強張る僕に穏やかな笑みを浮かべてみせる。そして冷え始めた僕の手を拾うと、しっかりと握り締めた。 『……あの子が、例の』 『随分と冷めた子ね』 『まあ、なんて卑しい……』 ──あの時も、そうだった。 世界中の誰もが僕を蔑んでも、アゲハだけは違っていた。 守られてる……そう思った。 学校でもアゲハは、僕を守ってくれた。 「……」 だからこそ、信じたい。 この手を。 いま頼れるのは、お兄ちゃんしかいないのだから。 公園の周りを歩きながらマンションへと戻る。 表からひとつ入った所にあるそれは、周囲の建物よりも高くて。形の整った植え込みに鉄製の柵、中世のヨーロッパを彷彿とさせる大きな門が、更に高級感を与えている。 こうして外から見ると、こんな立派な所に住んでいるんだ、と改めて実感する。 「疲れてない?」 キュッと握られる手。 温かくて、頼りがいのある手。 「……うん」 アゲハが一緒だったから…… そう言いたかったけど、恥ずかしくて。握られた手を少しだけ握り返す。 門をくぐり、ガラス戸の前に辿り着く。 部屋番号を入れ、自動ドアが開いた瞬間── 「───アゲハッ!!」 ドンッ 背後から迫る人影に、振り返る間もなく突き飛ばされる。 枯れ葉のように軽い身体は簡単に吹き飛ばされ、大理石のような壁に肩から激突し、頭を強く打つ。 「汚い手で触るなっ!」 ズリズリと壁を伝って崩れ落ちる身体。鈍い痛み。動けずにいる僕に、ヒステリックな女性の怒号が飛ぶ。 「今後一切、アゲハに関わるなっ。……この、疫病神ぃ!!」 痛みに堪えながら瞼を持ち上げれば、僕を差す指先がぼんやりと見えた。 グラグラと揺れる脳内。 瞬きをして、僅かにクリアになった視界でもう一度女性を捉える。 「……死ね!」 敵意の籠もった、鋭い声。 向けられていたのは、指ではなくナイフの刃先。 一瞬で頭が冴え、大きく目を見開けば── 「……え」 そこにいたのは、随分と年老いた──母。

ともだちにシェアしよう!