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組曲 19 side奏多

近くのコンビニで買い物を済ませ、急いで戻ると、凪は眠っていた。 顔はまだ真っ赤だし、呼吸は浅いけど、苦しそうだった表情は少し穏やかになっていて。 ほっと息を吐き出すと、途端に身体の力が抜けるような感覚がした。 知らないうちに、自分もずいぶん緊張してたらしい。 いつものことって言ったよな… 昨日言ってたこと 全部嘘じゃねぇか… 本当はおまえ 全然大丈夫じゃないんじゃないか…? ベッド脇に腰を下ろし、眠る凪の顔を見つめていると。 ふるりと睫毛が震えて、ゆっくりと目蓋が開いた。 ぼんやりとした視線が宙を彷徨う。 「凪、冷えピタシート買ってきたけど、貼るか?」 声をかけると、ゆっくりと視線が俺の方を向いて。 俺と目が合った瞬間、その瞳の奥に安心したような光が浮かんだ。 俺の勘違いかもしれないけど。 「ん…」 小さく頷くから、箱から一枚取り出して。 「ごめん。ちょっと触るな?」 振られた手前、一応断りを入れてからの方がいいかと、一言添えながら熱いおでこにシートを貼る。 剥がれないように指先でそっと抑えてると、熱い手が俺の手に触れた。 「ごめ…ごめん、かなた…」 思わずビクッと震えてしまって。 そのままどうしたらいいのかわからずに固まってると、凪は小さな声で謝罪の言葉を口にする。 「おれ…ひどいこと、いったのに…なんで…?なんで、こんなにやさしくしてくれるの…?」 ポロポロ、ポロポロと。 真珠のような涙が溢れ落ちて。 まるで子どもみたいに泣く姿に、ぎゅっと胸が締め付けられた。 「別に、おまえはひどいことなんて言ってねぇよ」 添えられた手を、恐る恐る握ると。 弱い力だけど、握り返してくれる。 そのことが、少しだけ俺に勇気をくれて。 「それにさ、俺たち友だちだろ?友だちが困ってる時は、助けるに決まってんだろ。だから、凪が気にすることはなんもないし」 止めどなく流れる涙を、指でそっと拭ってみた。 凪は、潤んだ目でじっと俺を見つめてたけど、避けるような仕草はなくて。 そんな些細なことが、ひどく嬉しい。 「今度俺が困った時は、凪が助けてくれよ。それなら、フェアだろ?」 「……うん……」 わざとおどけてそう言うと、微かに微笑んでくれた。 「あ、アイス買ってきたけど、食べるか?」 「……ううん…あとで……」 「そっか。じゃあ、もう少し寝ろ。俺はまだここにいるから、なんか苦しかったりしたらすぐに言えよ?」 眠そうに何度も瞬きをする凪を寝させようと、握った手を布団のなかに戻そうとすると。 きゅ、と凪の手に力が入って。 「…て…つないでて、ほしい…だめ…?」 思ってもみなかったおねだりが、溢れ落ちた。 「…え…」 「…だめ…?」 答えに詰まった俺を、涙で潤んだ瞳が見つめて。 そんな目で そんなこと言われたら 断れるわけないじゃん… 「わかった。手、握っててやるから、安心して寝ろよ」 笑顔を作りながら、手を握り直してやると。 安心しきったように頬を緩めて、眠りに落ちていく。 無垢な子どものような顔で眠る凪を見ていると、心のなかは愛おしさでいっぱいになっていって。 「…まいったな…」 熱い手を握り締めて、俺は深く息を吐いた。

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