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哀歌 16 side奏多

「…なんで…?」 夕飯が出来上がって、誉先生に呼ばれて2階から降りてきた凪は、俺の顔を見て固まった。 「今日は奏多くんが唐揚げ作ってくれたんだよ。手際良くて、助かったよ」 無言で見つめ合う俺たちを、誉先生が笑顔で遮って、凪をダイニングテーブルに座らせる。 先生はその隣に座るように俺に促して、自分は凪の正面に座った。 「では、いただきます!」 「いただきます」 「…ます」 先生の音頭で手を合わせ、食事を開始する。 ご飯を口に入れながらちらりと横目で凪を見ると、俺が揚げた唐揚げを躊躇なく口に入れて、もしゃもしゃと咀嚼してた。 「どう?凪、おいしい?」 「…うん。おいしい」 「いっぱい作ったから、いっぱい食べてね。奏多くんも。ほらほら、若いからいっぱい食べるでしょ?」 「あ、はい。ありがとうございます」 目の前の大皿に山盛りに盛られた唐揚げを皿に次々に移されて、思わず苦笑が漏れる。 3人でこの量って 明らかに作りすぎだと思うけど… 凪の周りのαって まじで大食いなの…? 「…奏多は、そんなに食べないよ。αなのに、少食なんだもん」 どのタイミングで止めようか迷ってると、凪が横からストップをかけてくれた。 「え?そうなの!?」 「いや、別に少食じゃなくて、普通ですけど…」 「普通じゃないよ。よくあの食事量でその体型維持できるよね。学食でも、コロッケカレーだけだし」 「またコロッケカレーの話かよ。いいだろ、コロッケカレー。美味いぞ?」 いつもの言い合いを始めると、先生がクスクスと声を立てて笑って。 凪はバツが悪そうに眉を顰め、俺から顔を逸らしてまた唐揚げを口に入れる。 「本当に仲良しなんだね、二人は」 「別に、仲良しじゃないし」 素っ気なく、先生の言葉を否定したけど。 その横顔は俺の知ってるいつもの凪と同じに見えて。 俺はほっと胸を撫で下ろした。 なんとなく 俺とは距離を置こうとするんじゃないかと思ってたから 「ところで、奏多くんは凪とどこで友だちになったの?この子、全然そういうの話さないから、奏多くんが訪ねてきてびっくりしたんだよ」 「あー、俺たち、大学の同級生で。っても、俺はバイオリン専攻なんですけど。試験の日にピアノ伴奏頼んでた友人がインフルで来れなくて、急遽凪にお願いしたのが最初で…」 「へー!凪が伴奏!それは頼もしかったでしょ!」 俺の話に、先生はまるで自分の子どもを自慢するみたいに鼻を鳴らす。 「ええ、まぁ。最初はこんな高圧的な奴とうまくやれんのかって思ったんですけど、めちゃくちゃやりやすかったです。試験も、凪のお陰で良い成績取れたんで」 その姿がなんだかお茶目で、ついつい気が緩んじゃって。 余計な一言を口にした俺を、凪が氷点下の冷たい目でジロリと睨んだ。 「高圧的って、なに。そんなふうに思ってたんだ?」 「いやだって、おまえ、最初の印象最悪だったぞ?」 「そっちこそ、珍獣を見るみたいな目で俺を見たじゃん。そのほうが最悪だけど?」 「そんな目で見てないだろ。確かに、Ωを生で見たのは初めてだったけど」 「いや、見た。絶対見た」 「見てないって!」 「…ホント、仲良しだなぁ、君たち」 くだらないことで言い争う俺たちを。 誉先生はなぜか楽しそうに眺めていた。

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