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第4話

これも、このアトリエに通うようになって知った事の一つで、遥は時々こんな風にソファで寝てしまう。 それも結構深い眠りで、文字通り死んだ様に眠る姿に最初は少し驚いた。 でもやっぱり綺麗だな、と思いながら寝顔を見ていると。 “その肌に触れてみたい” そんな衝動に駆られた自分に驚いた。すぐにそんな思いを振り払う。 でも、ごくりと唾を飲み込む音がやけに煩くて、同時に自分の心臓の音も大きくなっていて。 スケッチブックと鉛筆を置くと、ゆっくりと立ち上がっていた。 無防備なのに、彫刻のように整った寝顔、長い睫毛、陶器のような白い肌。形の良い薄い唇。 気付けば、その頬に触れていた。 「……冷たい」 元々体温が低いと言っていた遥だったが触った瞬間ヒヤッとして、思わず手を引っ込めてしまう。 でも、一度触れてしまうと、人は欲張りになるのか。 今度は、唇に触れてみたくなった。 きっと、好きな人の話なんか聞いたからだと思う。 本当に綺麗な人だ。でも、男の人にこんな感情を持つのって変だし、遥だって困るに違いない。 でも脳裏に浮かんだのは“キスしてみたい”って事だけだった。 寝て居る人相手にそんな事出来ないのに、速くなった鼓動が治らない。 そんな時、窓から強い風が部屋に吹き込んだ。 自分の後ろめたい気持ちを咎められたのかと思わずびくっとすると、その風に煽られて遥のスケッチブックがパラパラとめくれながら床に落ちた。

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