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第9話

「あ、あの……」 「お前どこまで知ってんだよ! ふざけんな! どこで知った!? いつから知ってる!? つか、誰から聞いた!?」 矢継ぎ早に質問を浴びせられ怯んで後退りするも、きつく腕を掴まれてできない。 「聞いてません」 「じゃあなんで!!」 「……絵が」 「くそ、あいつそんなもん残してたのか!?」 「いや、ただの寝顔です……」 そこまで言った矢先、突然目の前に衝撃と共に星が飛ぶ。 その反動で壁に背中を打ち付けて尻餅をついた。 「もう思い出したくもないんだよ!」 「どうしてですか?」 「そんなの間違いだからだろ」 「でも、絵の中のあなたは幸せそうにしてたじゃないですか」 「黙れ! あいつが悪いんだ。俺は誘われただけだ。それなのにトラックなんかに飛び込みやがって!」 「飛び込んだ? 嘘だ!」 「嘘なもんか! あいつといると人生狂わされる。不幸になるんだよ!」 遥の最後の言葉を思い出していた。 人を不幸にしたくないって。 きっと遥はこの人にも同じ気持ちでいたはずなのに。 僕は悔しくて堪らなくなった。 「それ、遥さんに言ったんだろ!? 同じ事を本人に!」 気が付いたら僕もその人を殴っていて、でも喧嘩なんてした事がないからすぐにやり返されてまた殴り飛ばされると、持っていたものが宙を舞うのが見えた。 (あ、遥さんの絵が……)

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