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第11話

「あの人の事ばかり庇うのはやめてください」 「なんだよ。機嫌悪いな」 「そんなの嫉妬に決まってるじゃないですか!?」 大きな声を出すと、遥は目を丸くしたかと思えばそっと視線を伏せた。 「飽き飽きしてたんだ。自分の事も何もかも。好きになったのは親友で、男で、それが興味本位でも自分を必要としてくれた事が嬉しかったのに、それも叶わなくて。色々重なってさ、赤信号に気付かなかったんだよね」 遥はそのまま続けた。 「自殺じゃないけど、はねられた瞬間に思ったよ。死んでもいいかもってさ。楽になれると思ったんだ。でも、生きる気力もないのに残酷だよな。心が死んでるのに体の方が死を受け入れようとしない。それでこんな中途半端なままだ。今更生きたいと思う事もないのに」 遥の肩を掴む手に、無意識に力が入った。 「僕は遥さんが好きです」 「幽霊みたいなのだってわかってもそんな事言うの?」 「幽霊じゃないです。遥さんの場合は幽体離脱ってやつでしょう?」 「同じようなもんじゃん」 「違います。生きてるから。全然違います」 そう言いながら強く抱きしめようとすると、遥は壁にもたれながらずるずると座り込んだ。 俯く遥の顔を覗き込もうとすると力一杯押し返されて、遥が自分の両手で顔を覆う。 「遥さん?」 「……もうやめてよ」 そう言った遥の声は震えていた。 「迷惑ですか?」 「迷惑だよ」 「でも、好きなんです」 「なんで? 俺の事なんてよく知りもしない癖に」 「理屈なんてない」 「……もう、ほんと嫌だ」 その華奢な肩が震えていて、どうにかしてあげたいと思うのにその手はまた振り払われてしまう。 「……好きになって、ごめんなさい」 すると、一層小さくなった体が震えながら絞り出すように声を出した。 「もうやめて。これ以上言われたら……好きになっちゃうから」

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