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第12話

その言葉を聞いて、思わず抱きすくめた。 「好きになってもらわないと困ります。その為に、僕は一生懸命頑張ってるんだから」 「俺は応えちゃいけない」 「どうしてですか」 「応えられるわけないだろ。俺は半分死んでるみたいな人間なんだ! 戻りたいと思っても戻れるかもわからないし、もう手遅れかもしれない」 いつの間にか、遥の頬には涙が伝っている。 「それは僕のこと少しは好きになってくれたってこと?」 「……人と喋るのも、こうやって触れるのも三年ぶりだったんだ。ずっとここに居たけど、だれも気付いてもられなくて、ちょっと気付く奴だって気配くらいなもんで。……夏樹が初めてだった。あの日、声をかけられてから喋ることが楽しくて、それに抱き締められるのも心地よくて……」 遥は涙を一杯に溜めた目で、僕のことを見上げた。 「……好きにならないわけがないんだよ」 思わず抱き寄せて気付いたときにはキスをしてた。 初めてのキスはとても冷たいキスだったけど、その柔らかい感触が僕の中の独占欲を掻き立てる。 「生きるって言ってください。生きたいって思ってください」 途中で涙が出てきて声だって掠れて、すごくカッコ悪いけど、乱暴に涙をぬぐうと遥がにっこり微笑んで僕のことを見ていたんだ。 「ありがとう。こんな俺なんか好きになってくれて」 そう言って微笑まれた瞬間、理性は全て飛んだ。

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