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第14話
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すっかり暗くなった小屋には月の光が差し込んでいた。
「夏樹。約束は出来ないよ」
そう遥は静かに言う。
「生きるって決めてくれたんですよね」
「そう思っても戻れるかもわからない。三年も寝たきりだったんだ。どうなってるかわからないし、記憶だって……」
不安そうに遥は俯いていた。
「それなのに期待を持たせるような事してごめん」
「なんで謝るんですか?」
「夏樹に一生癒えない傷を残すかもしれないから」
「遥さんがつけたものならいいです」
「お前な……」
少し呆れたように遥がため息をついて、にっこりと微笑んだ。
そんな時だった。
淡く細かい光の粒が遥を包む。
それはどんどんと強い光になって、それと同時に遥の体が透けていった。
「遥さん……」
遥も透けていく自分の手を見つめながらその手をぎゅっと握りしめると、僕の事を抱き締めた。
「夏樹。さよならだ」
「もう会えないみたいな言い方ですね」
遥の体は震えていた。
「目の前にはちゃんと遥さんがいるのに、本当はいないんですね」
戻るべき所へ戻る為に遥から放たれる光は量を増して、まばゆくて目を閉じてしまいそうになるけど、しっかりと目に焼き付けておきたい。決して忘れる事のない様に。
そして、願った。
「遥さん、一生のお願いです。……一回でいいから、僕のこと好きって言って」
でも、まばゆい光に包まれながら遥は柔らかく笑うだけで、かぶりを振った。
その目には涙が滲んでいて、好きだとは言わない代わりに僕を引き寄せキスをした。
その唇が離れ、涙を浮かべた遥が微笑んだ瞬間。
一段と光が強くなったと思うと僕の手が空を切り、辺りは一瞬にして暗闇に包まれた。
押し寄せる孤独に、力なく座り込むと床にぼとぼとと涙が落ちていき、次第に声を上げて泣いていた。
その声と涙が枯れるまで、僕はそこを動く事ができなかった。
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