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第7話
遥さんのアトリエに行かなくなって数週間が経ち新学期が始まっていた。
今日も他の部員が帰った中、美術室でひとり遥の描いた空の絵を思い出している。
何度目かもわからないため息をつきながら、ふと遥も美術部だったのなら、作品が残されているのではないかと思った。
そして部室にある古い作品を一つひとつ見ていくと……小さな空の絵を見つけた。
一目見た瞬間、まるで窓を切り取ったかのようなリアルさに加えて胸が詰まる様な青色に、遥の絵だと思った。
「なんだ、風間。まだ残ってたのか」
すると顧問の小森先生がやって来て遥の絵に目を留める。
「それは……」
「綺麗ですね。青色が」
「あぁ、これを描いた生徒の描く青は、どんな色調の青でも深みがあって素晴らしかった」
そう先生が話している間も食い入る様に見ていると、不意に右下に遥が書いたサインを見つける。
シンプルにローマ字で書かれた名前の下の日付を見てふと考えた。
え──?
そんな時だ。先生が絵を見ながら、とても懐かしそうに、でも悲しそうに言ったんだ。
「残念だった……あんなことがなければ、きっと画家として成功していたのに」
「……あんなこと?」
聞き返しながら、自分の中でも答えを探していた。
この違和感、間違いであってほしいと思う。
日付の違和感、遥の行動、低い体温、色々と考えながら先生の言葉を待っていた。
「……事故に遭ったんだ。学校帰りにトラックにはねられて」
「いつ、ですか?」
「3年前の今くらいの時期だったと思う」
さっき見たサインの下の日付とも合致していた。
「な、亡くなったんですか?」
「いや、その時は意識不明の重体って聞いたけど、その後遠方の病院に転院してよくわからない」
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