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第9話 夢かもしれない
「あっ……ちょ、待って」
困惑混じりの自分の声があまり響かなくて、少し、大胆になっていく。
「やぁっ……ぁ、ンンっ」
教科準備室、けっこう音が響いたんだ。廊下まで聞こえそうでさ。誰かがそこを通ったら、ヤバいんじゃないかって思って、いっつも。
「そんな声だったんだな」
「?」
「いつも声、我慢させてたから」
「あっ」
音がするほど強く肌を吸われて、思わず甘い声が零れ落ちた。
気持ちいいってどうしてもこぼれそうになる声をいっつも我慢してた。外に聞こえるから。ぎゅっと唇を閉じて、それでも気持ち良すぎて我慢できなくなりそうな時は、手で押さえて。
「声、もっと出していいよ」
「あっ、あぁぁっ」
肌蹴けてきてしまったバスローブの緩んだタオル地の合わせ目から露わになった乳首に先生がキスをしてくれる。それがたまらなくて、自分が、先生の指先を思い出しながらいじる時とは全然違っていて、おかしくなりそう。
気持ち良くて、仕方ない。
「あ、先生っ」
乳首にキスしてもらえるの気持ちいい。
「志保」
名前を呼んだら、少し身体を起こして、先生が首筋にキスをしてくれる。耳元で先生のキスの音を聴きながら、今度は乳首を指先で抓られて、切ない声が溢れて落ちる。
優しく先端を押し潰されて、痛いくらいに抓られて、爪で弾いてから、カリカリって引っ掻かれると、もう。
「あの頃もだけど……敏感」
「あ、だって」
先生の手がするりと乳首から脇腹へと滑って、緩んで解けかけてるバスローブの中をもっと進んでいく。
「っ、あ、ね、先生」
脇腹を撫でられると、キュと身体が強張った。
「あ……の」
先生のワイシャツにしがみつくようにしながら、自分の、前よりずっとデカくなって、華奢でも無くなった身体をどうにか小さく丸めながら腕の中で精一杯隠れてみせた。
「あ、あのさっ先生」
「?」
「抱け、ない、かもよ?」
そうなる前に自分から言っておいた。なんかその方が実際にダメでも傷つくのが軽めで済むんじゃって思って。
あの時は、もっとさ。
中性的、だったでしょ?
「その、あの時ってまだ、俺」
こんな男っぽい身体じゃ、なかったでしょ。
筋肉、なかったし。手ももう少し小さくて。
顔だって。
「だから、その」
あの頃みたいにさ、可愛い感じ、じゃないでしょ?
「もう全然、あの、俺、違くない?」
一目惚れって言ってたじゃん。それなら尚更、無理かもしれない。見た目、だけならマジで全然変わったと思うし。
だから、抱けんの? って。
「その心配はいらないけど」
「え、」
「モデル、してる志保を見てたし」
「えっ」
あ、まだ、そこ勃……。
「それより、他の心配した方がいいかもな」
「あっ、何っ」
「抱かれない心配はとにかくいらないから」
ローションを纏った指が、そこに触れた。
「っ、ん、あっ」
指、入ってくる。優しく、中に、自分のじゃない、あの先生の指が。
「あ、あぁぁっ、ン」
久しぶりに感じる、先生の指に狼狽えてると、前を握られた。
「あ、待っ、そ、んなのっ」
扱かれながら、指がもっと奥まで来て、小刻みに内側を撫でてくれる。
前を扱かれながら。
「っ、あっ、待っっ……あ、あぁぁ」
今扱かれてる根本を中から指で押されて、刺激されて、頭の中で電気がビリビリ走ってる。たまらなく気持ちいいのと、久しぶりに先生の指先を感じてる困惑と、それから、シーツにしがみつきにながら薄目を開けると、そこに先生がいることの喜びで、とろとろになってく。
どうしよう。
本当に先生だ。
「あ、あ、あっ、先生」
今、俺、先生としてる。
「あぁ、それ、ヤバい……ね、先生」
先生の指だ。
俺より長い、先生の指。
ちっとも届かなくて、もどかしかった。いつも、そこ、撫でてもらえるとすぐに蕩けて、すぐにイッちゃう場所。そこを撫でたくて、そこを撫でてイキたいのに、もどかしさと、切なさばっかがその届かない奥に溜まっていく感じ。
欲求不満ばっかが逆にどんどん膨らんでた。
「あ、あぁっ、イクっ」
どうしよう。
「あ、先生、イクっ、先生っ、イっちゃうっ」
嬉しくてたまんない。
「あ、あぁぁぁっ」
先生の指に撫でてもらえてる。
そこ。
「あ、っ」
「変わらず、ここが好き? 志保」
好き。
そう何度も頷くと、先生が笑って、前屈みに腰を折り曲げた。
「ソファによくしがみついてた」
「っ」
だってそこ、されると、すぐに溺れてしまうから。必死にしがみついてたんだ。
「あっ、それ、無理っ、強いっ、ぁ、刺激っ」
中を弄られながら、クチュクチュって、甘ったるい音がベッドに染み込んでく。ソファとかデスクじゃ、音が響くばかりで、少し緊張してた。
平気?
バレない?
そうちらりと頭の端っこが周囲を伺おうとして。
でも、ここではそれを気にしなくていいから、すぐそこに廊下があって他の生徒が通りかかるかもしれないって考えなくていいから、気持ちいいことに夢中になれる。
あの頃よりもずっと気持ち良くて。
あの頃よりもずっと溺れてる。
「志保」
名前を呼ばれただけで、きゅんって、孔が先生の指を締め付ける。
それを指先から感じて笑いながら、先生が乳首にキスをしてくれた。
気持ち良すぎて、腰が浮き上がるともっと指で中を可愛がられて、乳首をもっと唇でいじめられて、頭の芯がジンジンしてくる。
溶けそう。
俺、今、先生と。
「あっ、あっ、先生」
「うん」
「先生っ」
先生の指でしてもらえるなんて。
先生の手で扱いてもらえるなんて。
先生の唇で、舌で、乳首、触ってもらえるなんて。
「あっ、イクっ、イクっ」
先生と、また――。
「……あっあ、あぁぁぁあっ!」
「志保」
乳首を甘く噛まれながら、指であそこを突かれた瞬間、達してた。
「……ぁ」
胸まで飛ぶくらい、イってた。
「先生」
先生とまたできるなんて、嬉しくて、気持ちよくて、夢みたいで。
「……先生」
夢じゃなくて、触れて、掴まってられることを確かめるように、手を伸ばした。
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