31 / 56

第29話 ケーキ

 先生のしてくれるセックスはいつも優しくて。  丁寧にほぐして、慣らすのにたっぷり時間をかけてくれるセックスで。  いつも一回だけだった。  ケーキみたい。  すごく美味しいけど、食べたら、あっという間になくなってしまうケーキみたいなセックス。  甘くて、素敵で、美味しいご馳走。ご馳走だから、いつだってもらえるのはワンカット分。もう終わってしまったと、たっぷり味わって食べたはずなのに、もうまたすぐに食べたくなる。だから、また次の時に、目の前に用意されると飛びついて、慌てて食べ尽くしてしまう。  もっと食べたい。  おかわりしたい。  お腹いっぱい食べてみたい。 「せんせ、っ、あ、あ、乳首、も、したら、イっく」  貪り食べてみたい。 「あっ、先生っ」  甘くて上品なケーキ。 「っ、中、すごいな」 「ホ、ント?」 「っ、気持ちいい」  嬉しいと囁きながら、もっと大胆に足を広げて、跨って、先生の首にしがみ付きながら、腰を揺らした。 「はぁっ」  気持ちいいところに自分から押し付けて、先生の形を味わってるところを見つめられながら。 「あ、先生っ、また、イクっ」  乳首を赤くなるまで甘噛みされながら。  先走りと射精で濡れた前を握られると、背中を快感が舐めるように撫でていく。ゾクゾクする。 「あっっ、あぁっ」  めちゃくちゃにしてってねだった。 「先生っ」  先生にめちゃくちゃにされたいって言った。 「あっ、そこっイク」  跨って、腰を深く沈めて、奥に突き立てられたペニスに震えてる。 「あっはぁ」  貫かれてる。 「あぁっ」 「イクっ」 「まだ」 「え?」 「首に掴まって」  言いながら、先生が俺のをぎゅっときつく握った。それから挿入を解くことなく、ぐるりと体勢を入れ替えて、俺がベッドの中に沈むように押し倒された。 「あっ」  当たる場所が変わって。 「っ、あっ」 「志保」 「あ、ああっ、激しいっ」  寝室に肌を打ち付け合う激しい音が響く。奥まで、打ち付けるように先生が腰を突き上げる度に、その激しさにベッドが乱れてく。 「あ、んんんっ」 「志保」  気持ち良くておかしくなりそう。  腰をしっかり片手で捕まえられながら、前はぎゅっと握られたまま、深く強く貫かれて、激しくて、たまらない。 「俺」  激しくて、苦しいくらいで、嬉しくなる。 「嬉しくて、ヤバい」 「……」 「ずっとこうされたかったから」  めちゃくちゃにして。 「あ、先生っ、あぁっ、や、も、っ」  イきたいのに、先生が握ってるからイけない。 「先生っ」 「志保」 「あ、あっ」  根本は握りながら、先生の親指が俺のを可愛がるみたいに撫でるのがたまらなくて、物欲しそうに腰が勝手に浮き上がる。 「教えてあげようか?」  な、に? 気持ち良くて、返事ができない。 「俺の頭の中で志保がされてたこと」 「っ……ぇ」 「背中でもどこでも引っ掻いていいよ」  そう言って、先生が強く、指が食い込んで痕がつきそうなほど強く俺の腰を掴んだ。 「っ、あっ」  そこは。 「あっ」  それ以上奥は。 「一番奥まで挿れるぞ」 「あっ、っ、っっ、っンンンンンっ」  ダメなところ、って思った瞬間、ぎゅっと前を握ってた先生の手が離れて。射精の快感と、奥の、もっとずっと奥を開けられた衝撃が一緒くたに襲いかかってきて。 「っ、あっ、はっ」  深く射抜かれた瞬間、達してた。 「あ、あぁっ、待っ」 「志保」  達した身体を味わうように、先生の熱がうねる中を行き来する。  息するの、どうやんのかわかんない。  ズンって頭まで響いた気がした。  ピッタリと隙間なく先生の身体と重なって、さっき喉奥でしゃぶった先生の切先が、今、俺の、一番奥を犯してる。 「ひどい先生だろ?」 「あ、あっ、っ」  先生が腰を引くたびに奥の知らない場所が引っ掛かる。今、達した余韻でざわつく身体をそんなふうにされたら、おかしくなるのに。 「あぁっ」  それからまた根本まで全部俺の中を貫いて。 「ひどく、ない」 「志保」  何度も何度も、奥を激しく可愛がられて。  もっと可愛がられたくて、脚をはしたなく広げた。 「もっと、して」  繋がった場所に手を伸ばして、いっぱいに広げられた孔を指でなぞってから、根本まで全部俺の中にあるんだって、先生のを撫でて。  嬉しくておかしくなりそう。 「ったく」 「あ、あ、あっ、あぁっ、奥、あっ、入ってるっ」 「そういうのどこで覚えたんだ」 「あ、あぁっ」  激しさが増した。 「あ、妄想っ、で、ずっと、したかった、からっ、先生と、またっ、て、あぁっ」  衝撃が身体の芯を駆け抜けて、ベッドが軋むくらいに激しいセックスにもっと溺れたくて、シーツにしがみついた。 「あ、あっ、だめ、イク、奥っ」  自分が何を喋ってるのかもわからなくなるくらい。 「あ、あ、イクっイッちゃうっ、ああっ」  勝手に溢れる自分の声を押しとどめるように手の甲で口元を押さえたら、その手を捕まえられた。 「声、聞きたい」 「あっ、だって」 「志保っ」 「あっ、そこ、ダメって、イク、イクっ」  言葉を忘れたまま。ベッドに手を縫い付けられた。先生の激しい腰つきにずり上がりそうになる身体で必死にしがみついた。 「あ、先生っ、イクっ、っっっっっ」  ぎゅって抱きついた瞬間、奥で、感じる。  先生の熱が、奥に、ゴム越しじゃなく伝わって、溶けそう。 「あっ……」 「志保」 「あぁっ」 「っ」 「先生、もっと……」  どろりと溢れるくらい先生のを注がれて、嬉しくて溶けそう。 「知りたい」 「……」 「先生の頭の中で」  ケーキみたいなセックス。 「してもらえてたこと」  甘くて、美味しくて。 「もっと、知りたい」  素敵なご馳走。  もっと食べたい。  おかわりしたい。 「先生」  貪るように、深く深く、唾液が溢れるくらい唇を重ねた。角度を変えながら何度も濃厚にキスを交わしながら、挿入したままだった先生がまた、もっと熱くなるのを感じて。 「志保」  お腹いっぱいに甘いケーキを食べたくて、舌を差し込んだ。

ともだちにシェアしよう!