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第33話 綺麗だ。
先生の車なら覚えたよ。
だから、撮影終わったら、スタジオを飛び出すように駆け出して、待ち合わせてた場所に停まってた黒い車の助手席側からガラス窓をノックした。
油断してたでしょ?
先生はのんびりと、少し遅れそうって言った俺の言葉を信じて、頬杖をつきながら、スマホをいじってた。
ノックの音に驚いて、飛び上がって。
俺を見つけると、苦笑いをしながら、手を伸ばしてドアを開けてくれた。
警察かと思ったって。
駅近くだし、路上駐車だし。
それから、車で先生のマンションに向かった。
撮影が延びたせいで、っていうか、テンション高かったカメラマンさんのおかげで、遅くなったんだ。もう少し早く、夕方には会えたはずだったのに、もう完全夜の空だった。でも、先生とお喋りしながらの街中ドライブは繁華街の賑やかな灯りと行き交う人の多さがお祭りみたいで、楽しかった。
車の中で、試験期間は大変そうって話をした。それから夕食は少し早いけど鍋にしようって言ってくれた。先生と鍋食べるとか、初めてで、楽しそうで、帰りのその車の中では、何味の鍋にするのかって話で盛り上がった。
「…………」
ただいま、おかえり、お疲れ様、そんな挨拶と一緒に、マンションの玄関で靴を脱いでたら、先生が目を丸くして、俺をじっと見つめてた。
「あは。わかった? 俺、なんか違う? メイクしてもらったまんまで帰ってきたんだ」
車の中、暗かったからわからなかったよね。しかも、先生は運転しないとだったから、前見てたし。
「あぁ、びっくりした。へぇ、メイク、そっか」
「うん。メイク乗りが良いって褒めてもらえた。それで、そのまま帰る? ってなってさ」
「……あぁ、確かに、綺麗だな」
「!」
先生は目を細めて俺を見つめると、俺には不似合いな言葉を自然と口にしてしまう。
「褒めすぎ、先生」
真っ直ぐ、直球で褒められるとくすぐったいんだけど。
「そうか? いつも、普通に綺麗だと思うけど」
「ちょ、マジでいいからっ」
メイク、そんなに厚塗りじゃないから、バレる。真っ赤になったのが、きっと。
「ぁ、でも、今日、すごい褒められた」
「へぇ」
「カメラマンの人、テンション高くてさ。ベタ褒め。シャンプーの広告撮影だったんだけど、メーカーさんも来てて」
マイナーなヘアケアメーカー。
大手の、みんなが知ってような企業メーカーじゃなくて、少人数の、メーカーさん。大手メーカーならコマーシャルとかバンバン作れるけど、そういうところじゃないから。だからこそのネット広告で、今回の新商品に力を入れてるらしくて、そのメーカーの人たちが見守る中での撮影だったから。
「すごい人だった」
「へぇ、すごいな」
「すごくはないけど」
撮影が乗ってるって感じだった。カット、そんなにいらなくない? ってくらい、たくさん撮ってた。
ただのネット広告の参考写真になるだけの、職業モデルだよ。ショウビズモデルとかとは全然違う。
「志保はすごいよ」
「?」
顔を上げると、先生がキスをした。
触れて、ちょっと唇を啄まれて、少し小さく声が出た。
「俺も、カメラマンだったらベタ褒めしてる」
「っ」
真っ直ぐ見つめられて、今日、撮影、結構なギャラリーだったのに。そのたくさんの視線を向けられるよりもずっと、緊張して、ずっとドキドキした。
鍋は水炊き。
色んな鍋を車の中で話してたのに、結局、原点回帰っていうか、一番シンプルなのがいいねって話になった。それに水炊きだったら追加の買い物しなくて済むから。早く帰りたいじゃん。早く帰って、ご飯一緒に食べて。
早く、先生に触れたい。
シャワーならスタジオで浴びたし、そこで、少しだけ、後ろを撫でておいたし。深くはしないで、浅いとこだけ指で。
そしたら、今日、俺の奥に初めて触れるのは先生だから。
奥は先生に仕立ててもらいたかったから。
スタジオのシャワールームで少しだけ準備したって言ったら、やらしいねって、囁かれて、まだ触っていない奥がぎゅって切なくなった。
「あっ……そ、こっ」
腰を掴まれて、後ろから深めに貫かれると、背中に快感が走る。
「あぁっ、先生っ」
「うん」
「あ、あ、あ、気持ち、ぃ」
奥が好き。
太くて熱くて、硬い、先生ので奥をノックするように突かれると、たまらなく甘ったるい気持ちになる。
「あぁぁっ」
もう、なんでもいいから。
「あ、あっ……あぁっ、先生っ」
先生の好きに、俺の中、掻き混ぜて欲しくなる。
「っ、ンンンンっ」
後ろから抱かれて、背中がくっと反り返る。奥深くにぐっと先生の押し付けられながら、手を、手綱みたいに掴まれて、膝立ちの体勢になった。そのまま、パンパンって数回、突かれて、奥が蕩けてく。上半身をそのまま後にいる先生に寄りかかるようにすると、手を強く掴んでた片手が俺の左の乳首をキュッと摘んでくれた。
「あっ、それっ」
気持ち良くて、下腹部がきゅぅって締め付けたら。
「あ、あ、イク」
先生の右手が俺のを握ってくれた。
「あぁぁぁっン」
すごい、気持ちい。
「あっ……先生」
奥も、乳首も、前も、先生に可愛がられてるの、おかしくなりそう。
「……志保」
「ぁ……ン」
「やっぱ」
「?」
な、に?
「メイクしてる志保も綺麗だけど」
睫毛が触れ合えそうなくらい近く。
「素顔の志保が一番」
「あっ、あ、あっ」
先生の瞳に自分が映ってるのが見えるくらい近く。
名前を呼ぶ低音に、鼓膜まで刺激されて。乱れた呼吸が唇に震えるだけで、ゾクゾクする。
「せんせっ」
舌先を絡め合う濃厚なキスを交わした。
「先生もイク?」
「あぁ」
「一緒に」
イきたい、そう囁く声すら交わし合った唇に喰まれて、飲み込まれて。
「あ、あ、ああぁぁあっっっ」
先生の手の中で射精しながら、先生の熱を奥に感じて、
「あっすご」
繋がったところ、奥も、手で扱かれた自分のも、気持ち良すぎて、濡れて、蕩けて、溶けそうだった。
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