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第59話 ありきたりなデート

 久しぶりにあの三人とした撮影はどこか安心感があって、楽しかった。  気を張らなくて大丈夫で、肩に力入れなくていい感じがして。ずっとリラックスしながらカメラの前に立っていられた。 『もしもし』 「あ、もしもし? 先生?」 『……撮影、終わったのか』 「うん。終わった」  けど、やっぱ、ここが一番、落ち着く。ホッとして、勝手に安心の溜め息が自然と溢れた。 『お疲れ様』 「うん」  今日は、週末。明日から先生は学校で、俺は大学で。 「あの」 『今……夕方か』 「うん」 『来るか?』 「いいの?」 『あぁ、夕飯、作っておく』 「やった」 『迎えに行こうか?』 「え、あ……」  そのほうが楽、だけど。社長が車で送ってくれるとは思うんだ。けど、なんていうか、「彼氏」のうちに行きたいからそこまで送って、とかって言いにくいっていうか。忙しい時に、彼氏のところまでの送迎頼まれたら、誰だって、ちょっとイヤでしょ。  とやかく言われたらやだし。言わなそうな気もするけど。 「あの、お願い、できたら嬉しい、です」 『あぁ』  けど、やっぱりどこか気が引けて、先生に迎えを頼んじゃった。  帽子を深めに被って、迎えに来てもらう目印にしたコンビニの脇に立ってた。前だと、明るくて、目立つかなって。スマホをいじってたら自然と俯いてられるし。  なんか、変なの、って。  ふと、帽子とって、顔を上げたら、何人かが俺のこと、知ってたりするのかもしれないっていうの、なんかすごい変だなって。 「!」  そんなことを考えながら、来週のスケジュールとか眺めてた。来週も忙しそう。撮影と打ち合わせが土日入ってる。そんで多分、大学の方の課題も色々提出あるし。グループでのプレゼンとかも、そろそろ煮詰めないとだ、なんてことを考えてたら、スマホが振動して、びっくりして、そのまま通話のボタン押しちゃった。 「も、もしもし」 『着いたよ』 「あ、うん。ごめん、引っ込んでた」  顔を上げると、先生の黒い車がコンビニの脇に止まってた。夕方、混雑してきた道路でギリギリ寄せてる。慌てて、その車に駆け寄ると、まるで追われてる犯人みたいにその車に飛び込んだ。 「お疲れ」 「あのっ、ごめんっ、迎えに来てもらってっ」 「いや、けど少し帰り遅くなるかもな、道が混みそうだ」 「あ、ごめっ、俺っ」  迷惑、だったかも。けど、やっぱ来週忙しそうなんだ。平日もちょくちょくいけなさそうで、それなら今、会いたくて。 「謝るの、俺じゃないか?」 「え?」 「撮影の邪魔になるかもしれないのに電話したし、会いたいから、のこのこ迎えに来るし。待たせた。それこそごめん」 「俺はっ、全然だよっ」  そう言ったら、先生が頬に触れてくれた。手の甲で、そっと。 「俺も、全然だ」  笑ってくれて、ほわりと気持ちがあったまった。撮影の疲れとか、忙しさとか、全部吹き飛ぶ。先生の体温にちょっとでも触れられたら、ほら。 「少し寝てていいよ。疲れただろ」 「全然っ」  なんかむしろ元気が出てきた。ドライブデートだし、とか思ってはしゃいでる自分がいた。 「あ、ぁっ、先生っ、奥」 「ここ?」 「あ、うんっ」  クンッて、先生が腰を突き出して、先のとこで、奥をトントンされるの、すごく気持ちいい。ほろほろに気持ちがほぐれて、脚がクタリと広がる。 「あ、やぁっ、ンン」  奥、小刻みに突かれながら、膝を先生の手が包むように掴んで、ぐって、大胆に開かせた。 「あぁぁ」  そして、もっと奥に先のとこを押し付けるようにされて、抉じ開けられて、堪らなく甘い声が零れ落ちる。 「ん、んっ」  零れ落ちた甘い喘ぎ声ごと食べるみたいに唇を塞がれて。 「んんんっ」  塞がれたまま、中を擦り上げられる。 「あっはぁっ、あ、あ、あ、あ」  絡まり合ってた舌が開放されたら、今度は前立腺をいじめられて、先生のを咥え込んだ孔がキュって締め付けた。 「志保」 「あ、先生っ、それ、ダメ、もっ」 「うん? ここ」 「触って、前、お願いっ」 「いいよ」 「あ、あぁぁぁっ」  中と前を同時に責められて、気持ちよくて、頭の中、真っ白になる。 「あ、あ、あっ」  気持ちいい、で頭がいっぱいになる。 「あ、あっ」 「志保」 「先生っ、先生っ」 「…………っ」 「あ、イク」  動くが激しくなった。このまま、先生のでイキたい。 「あ、っ」 「すごいな、締め付け」 「あ、だって」 「志保」 「あ、あ、あ」  気持ちいい。 「あ、イク、先生、イクっ」 「志保」 「あ、ダメ、だめっ、イクっ、あ、あぁぁぁあっ」  そして、しごいてくれた先生の手をトロトロに濡らして、奥でも先生にしゃぶりつきながら、達した。ゴムをしてたけれど、それでもたくさん熱いのを注がれながら、ぎゅって抱きつくと、先生の乱れた呼吸がすぐそこ、耳元で聞こえてた。 「今日、同じ、あの最初の頃に一緒に撮った、平川大志に先生のこと話したんだ」 「……大丈夫なのか?」 「うん。大丈夫。応援してるって」  セックスの後、こうしてベッドで他愛のない話するのすごい好き。 「そうか。よかったな」 「え、よかったなって、先生のことじゃん」 「確かに」  あははって笑ってくれる先生が布団をかけ直してくれる。あの頃は、セックス終わったらすぐに服着てたから。じゃないと、ね。人が来るかもしれないし。こんなまったりとした時間過ごせなかった。 「嬉しいよ」 「俺も先生のこと、彼氏とか言って、ちょっとくすぐったかった」  笑ってる。  ね、本当にくすぐったかったんだ。今も、そう。  フツーの恋愛みたいに、彼氏って先生のこと話して。フツーの宅デートみたいにセックスの後、ベッドでダラダラ過ごしたりして。  裸のまま、戯れあうように絡ませた素足がくすぐったくて。 「それでさ……」  こんなふうに夜を一緒に過ごせるのがたまらなく嬉しくて。 「あ、あとね」  溢れるように、ずっと笑ってた。

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