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第3話

風呂あがり、裸のままテーブルの上で黒光りするアレを眺め腕を組む。 誰もいないからいいがそうでなかったらちょっとヤバい光景だ。 これからする事を考えるとパジャマという選択肢は色気が無さすぎる。 とすると…裸…? 色んなものがベタつくしそれが一番いいのは分かってる。 けれど室内とはいえ冬の夜は肌寒い。 悩んだ末に真は過去に通販で買ったオーバーサイズのシャツ一枚を身に纏いベッドに寝転んだ。 シャツの裾は余裕で太腿を隠し、袖も長めでいわゆる『萌え袖』。 立派な〈彼シャツ〉だろう。 彼なんていないのに『そうなったらいいな♡』という希望も若干込めて購入したのだが現実ではひとりエッチのおかずになり下がった。 〈妄想♡彼氏とエッチ〉 シチュエーション的にはそんな感じだろう。 そして忘れちゃならない枕元にはローションとティッシュペーパー。 エロの必須アイテム…。 「ん〜…それから… …」 …それからどうしたかな…。 記憶が曖昧…というか思い出せない。 一旦眠りについた体は鉛のように重く容易く動かすことは出来ずその間にも意識が再び沈みだす。 だが沈み始めても何故かまた浮上していく。 『夢…見てる…?』 感じている雰囲気が若干いつもと違う気もするが…夢ならばそれでもいい。 今週は特に仕事が忙しく、睡眠時間と体力を随分と削られ、夢を見る余裕すらなかったから。 『…どうせ見るなら…エロい夢がいいなぁ』 色っぽい話も体験も何も無いがもちろんそういった欲求は有り余っている。 真は伸ばしていた腕を少し曲げてオーバーサイズのシャツの上から先端を指先で擦った。 「…あ…ぅ…ん…」 実家を離れて暮らするうちに覚えたひとり遊び。 姉との同居生活では自身の手で触れるくらいしか選択肢は無かった。 実の姉弟とはいえ、性癖は重大な個人情報だ。 万が一漏洩したらひとたまりも無い、死が待つのみ…。 だが今は違う。 念願の一人暮らし! 好きな時に好きなこと、やりたい事が出来る! 自分の置かれている環境が変わったのがきっかけとなって真は物理的に一人で気持ちよくなる事を模索し始めたのだ。 〈右手が恋人〉は定番だ。 だけど世の中には胸イキ出来る人もいるらしいからそっちも出来ることなら極めてみたい。 だがそれは本人の才能も関係してくるという。 自分で胸を弄るのは抵抗がある割にさほど気持ちよく無かったし今もアンアン言うほど感じる事は無い…。 薄い布一枚とはいえ焦れったくなって真はシャツのボタンを全て外した。 ひんやりした空気を肌に感じてとんがりがキュッと硬くなった気がする。 先端を親指と人差し指で挟んでみたり大きく摘んで芯を捏ねるように揉んだ。 それほど感じなくてもエロい雰囲気の導入にはちょうどいいから。 そうやって胸を虐めているうちに体の奥に熱の灯が揺らめきだした。 ゆっくりと高まっていく身体。 ぼんやりとした頭で手に入れた物を思い出す。 『届いたアレ…でイタズラのシチュ…とか?』 …我ながらいい趣味してるよな…。 だけど誰にバレることもないのならこんなアブナイ趣味にケチを付けられることもない。 『自分でやるんだし胸に秘めている分には性癖はあくまでも本人の自由』 テーブルの上に置きっぱなしにしたアレ…お疲れでついベッドに持ち込むのを失念した…いわゆるオモチャを脳内に思い描いていくぶん呼吸が熱くなった。 『風呂出たら試したかったけど…残業の疲れがしんどくてさすがに試せなかった…から…』 やってみる前提でラフなサイズ感のこのシャツのみという姿で布団に入ったものの睡眠欲には勝てず…結果として枕元に置いたローションと同衾して寝入ってしまった。 睡眠としては十分に足りてはいないがせっかく目覚めたのだからアレを試すのは無理でもちょっとだけ…ちょっとだけエロい事をしようと真は立てた両膝を開き、ふぅ…と息を吐いた。 そして後ろに入る所を想像し頭をもたげ始めたそこに手を添える。 真の中心はもう兆していてその先端は滑りを持っていた。 ぬるぬるした体液を伸ばすようにして右手でそっと扱き、左手は双丘の狭間にある固く閉じた蕾に触れる。 「あ…ローション…」 閉じた蕾を開かせる魔法(?)のアイテムの存在を思い出して片手で枕元を探ってみたがベッドに入った時は確かにそこにあったのにそれらしき物は手に触れない。 起き出してちゃんと探せばいいのだがこの期に及んでもわざわざ体を起こしてベッド周りを探したくない…。 『仕方ない…後ろは脳内シュミレーションで我慢』 ぐっと唇を噛み再び下腹部に手を這わせ、真は頭の中で空想を始めた。

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